防潮堤のように周囲より高くなった道を歩く。左手は海で、灰色の切り立った岩だけの小島が防潮堤から百メートルくらいの沖で波に洗われている。歩く道は白い石が敷き詰められており幅員は狭いのに白い四トントラックが方向転換しようとする。そこから道の両側に町ができはじめる。あるところで私は折り返し、再び歩く。道の光景は往きと変わる。道に高低差がある。二人の子供が「坂を登りたくない」と泣いていて、祖父母らしき老人がとまどった顔をする。「坂の上に住む金持ちの子供だ」と誰かが言う。自転車部だろう三人の少年が自転車を道の脇の壁に立てかけて何かを胃へ流し込んでいる。道のまんなかにはよくわからない雑貨を売る細長い店がある。青と白の毛糸の帽子をかぶり中東系の顔つきをした細長い男が少年の自転車に垂らされた鞄から何か盗もうと手を伸ばし私と目があって手を引っ込める。
腕時計を見るとデジタルで黒く15:50と表示されている。なにもかもとりのがした気分になると同時に、そのような表示の時計をベッドの近くに持っていないという意識とが拮抗しはじめる。これほ夢ではないのではないかも、という思考が差し挟まれ、寸断された夢のイメージがまだら状に流れては去る。寝ているのか起きているのかわからないまま覚醒する。