GWの中頃、乳がんだったことを友人に言ったら西加奈子さんのエッセイ『くもをさがす』をおすすめされた。
『くもをさがす』の初版は4月20日、わたしの乳がんがわかったのが4月21日。発売まもないこともあって親が新聞で見つけて本は買っていた。でも、正直まだ治療に向き合うのがこわくて読む気になれなかった。
でも、「そんなに深刻に書かれていないから」といわれ、勇気を出して読んだら、この半年を支えてくれた本になった。
『くもをさがす』は、西さんが南京虫に刺されてドクターにかかるところから始まる(実際は南京虫ではなく、蜘蛛だった)。その診察で少し前から気になっていた胸のしこりを伝えると、先生の表情が一変。別のクリニックを紹介され、検査、ゴタゴタがありつつも治療へと進んでいく。そんなカナダで乳がんを患った西さんのノンフィクション書籍だ。
初めて読んだときは告知を受けてショックから少しずつ立ち直ってきたころ。まだわからないことが多かった。でも、手術の直前、抗がん剤が決まった後、始まる前、ひと通りの治療が終わってから。ことあるごとにこの本を開いたし、開いていないときも、この本が隣に居てくれる感じがした。検査結果に落ち込んだときや抗がん剤の副作用が辛かったとき、何度もこの本の内容を思い出し、勇気をもらっていた。「西さんもああやって頑張っていたもんな」「この期間だけ辛抱すれば治療は終わるから」。
いつの間にか、わたしにとってかけがえのない一冊になっていた。
そして、おすすめされて数日後、読み終わったことを友人に伝えたら、こんな言葉を返してくれた。
この先、私も含めていろんな人が心を尽くして言葉や行動をかけると思うんだけど、やっぱり当事者しかわからないことがあるだろうし、そういうときに共感できる・してくれるものがあるといいと思うんだよね。
〇〇さんはこの本読んで、この先共感できるところが増えるだろうし、それは西加奈子が共感してくれることでもあると思うから。
そういうのがあるといいじゃんね、と思ったんだよね。
これを読んで無性に泣きそうになってしまった。ありがたいことにわたしの友人たちはみんな優しくて、病気になったことを言ったらみんな心配して温かい言葉をかけてくれた。もちろん、それはこの文章を送ってくれた友人も同じ。
それでも、病気になったことがない人には本当の意味で共感できないし、心の機微はわからないことも多い。そう知っているからこそ、『くもをさがす』をおすすめしてくれたのだと思う。本当は少し寂しさを感じていたけど、物事を冷静に見る友人の言葉に救われてもいた。
わたしの治療は一区切り。とはいえ、まだまだ終わっていない。これからも挫けそうになるたびにわたしはこの本を開くのだと思う。西加奈子さんの体験に共感できるところを探して。