がっこ

おにわ
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公開:2025/9/22

うちにはちいさいのがいる。

まだ一年と数ヶ月しか生きてない、会う人会う人にニコッとして愛嬌を売って生計を立てているのがいる。

最近その子は、危ないと言っているのにおもちゃ入れのうえにのぼり、わたしが座っているソファにむかって「がっこ」とちいさくてぽてぽての手を伸ばすことにハマっている。がっこというのは、抱っこのことだ。

なんなら、その子のお気に入りのクッション(どれくらいお気に入りかというとそれを洗濯しようとこっそり持ち出すと勘づいて泣いて抗議をするし、洗ったとしても干したそれを床に這いつくばりながら指差してとってくれと泣いたり叫んだりするくらいお気に入りのクッション)を、あらかじめ私のところに「んしょ、んしょ」と持ってきてから、おもちゃ入れにのぼって、「がっこ」といい、私に受け止めてもらって、それから私の上のクッションに頭をのせて、くつろぐのだ。

一度おもちゃいれにのった末に落ちたこともある。下にちょうど昼寝のための布団やら枕やらを置いていたので大事には至らず、ただ驚きで泣くだけで済んだが、自分の身長と大して変わらない高さから落ちるのは怖かったと思う。

それでも登っては、ソファに転がる。ソファに私がいなくてもその遊びは行われる。ちょっとしたジェットコースターのような感覚なのだろうけど、安全は保証されていないしやめて欲しい。しかし「おもちゃ入れに登れるようになった」という喜びと、「落ちるかもしれない」という恐怖と、ソファに飛び込んで「大丈夫だった」という安心感を得る遊びはきっと堪らないのだろうな。

一体どうしたらやめてくれるのか、まったくわからない。わたしだってそんな遊びがあったらきっとずっとやる気がする。仕方ないからきょうもずっと私はソファの「がっこ」係を全うする。

@oniwa028
遺書かもしれない