転職活動の記録

水槽
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公開:2024/9/25

世の中にはいろいろな「活動」があり、パッケージ化されたそれらに日々急き立てられている。妊活にはじまり終活におわるまでありとあらゆるフェーズが「活動」として推奨されている。保活、就活、婚活、

(ここで受験勉強をはじめとする受験に関することは活動としての言葉を持たないことに気づく。意外すぎる。何かあったら教えてください)

転活も例に漏れず「転職するための一連の活動」のことだが、一言で転活といっても人によって様々なんだろうなあということがわかってきた。

この夏いろいろあり「そうだ転職しよう」と決心し、8月頃から本格的に転活を開始。まずは転職サイトに登録しようと思い立ち、そのために新しくメールアドレスを取得する。フォルダ分できるほどまめじゃないし、そうでないと通常のメールが埋もれてしまうほど膨大な通知がくることを知っていたから。そして今思えばその一点のみでも大手転職サイトを利用しないという選択をすべきだったと思う

転活について情報収集をする中で「職務経歴書」と「履歴書」というものが必要だということを知る。それを転職サイトにアップロードしないといけないらしい。ちなみに証明写真(?)も必要。なんとまだスタート地点にも立たせてもらえない。

職務経歴書のフォーマットを入手し記入していこうとするも、自分のやってきた業務を棚卸ししたことがなかったのですごく時間がかかった。日々の業務は特に数字を追い求めるようなものではないため、特筆できる「成果」もない。そもそも成果をあげるために仕事してないし存在してないし、それをアピールしないと転職できないって何?と思ってくる。なんてことない業務内容をそれっぽく仕上げて書類を完成させる。転活をして感じたのは総じて「それっぽく語れることが重要」ということ。成果がなくてもおしゃべりが上手なら通っていくんじゃないか

大手転職サイトの「担当エージェント」なる人から連絡が来る。オンラインで面談してみると、「転職理由は?現在の年収は?希望の年収は?どういう業界をみているのか?どういう職種がいいのか?」などと矢継ぎ早に質問される。こわい。一生懸命答えていくと「ではこの条件で求人票をお送りしますね〜。少しでも興味があったらどんどん応募依頼ボタンを押してください。最低でも20は押してください」と捲し立て上げられる。まだ業界も定まってないのに、60以上の求人に目を通して興味あるなしを判断するのは相当疲れる。途中からよくわからなくなってきて、とりあえず応募しておこう……というノリでぽちぽち。

それが失敗だった。書類が通りはじめて気づいたけど、受かっても行かないような会社の選考を受ける意味ってほとんどない。それなのに適当にぽちぽちしたため受かっても行かないような会社から面接の調整がくる。始めの頃は「それでも練習にはなるから」「もしかしたら興味が出るかもしれないから」と面接に臨むこともあった。ただそもそもこちらもモチベーションがないのでそんな態度で面接をするのも先方に失礼かもしれないと思い始める。あと純粋に時間の無駄。

面接を受けたり求人をみる中で徐々に自分の希望する業界や職種が定まってきたので、いくつか辞退しようとエージェントに相談すると「迷惑がかかるのでもう日程調整したものは面接受けてください」と言われる。なんじゃそりゃ、と思う。確かに迷惑はかかるけど、そこを調整してくれるのがエージェントの仕事なんじゃないのか。なにやら企業の方を向いたコミュニケーションでこちらのことは二の次のようなので愛想を尽かしてその場で退会した。

次に登録したのは業界特化のエージェント。大手の手法とは違い、少数の求人を少しずつ受けていくスタイルのためこちらの方が合っていた。しかも職務経歴書を添削してくれたり面接対策をしてくれたりとサポートが手厚い。はじめからここに相談していれば……と思いつつも大手で大量の求人をみた上でこの業界に絞ることができたので結果オーライというものかもしれない。添削してもらったおかげか書類の通りもよく比較的順調に選考が進んでいく。

ちなみにここでもう一つ別のエージェントに登録した。というのもある企業の選考をどうしても受けたかったのだが先述のエージェントではすでにクローズしていて受けられず、こちらのエージェントでは扱っているという話を聞いたため。こちらでも少しずつ求人に応募していくことになった。

いいテンポでぽんぽんと選考が進むところもあれば、しばらくの間音沙汰ないところもある。その中でも頭ひとつ抜けてテンポよく最終面接までたどり着いた会社があった。なんだか縁も感じたし業務内容や会社のもつビジョンミッションにも共感でき、なにより自分の経験や考えを聞いた上で「一緒に働きたい」と言ってもらえたことがありがたい。直感的にここでなら楽しく働けるんじゃないかと思った。もちろん条件や労働環境も加味した上でだけど、こういう直感は大事にした方がいい。

今日その会社のオファー面談に行ってきた。改めてオフィスを見たり一緒に働く予定のチームのかたと顔を合わせたりしてだいぶイメージも湧いて、このまま内定承諾しようと思っている。いいところにたどり着いてよかった。

なぜ働くんだろうと考えたとき、この社会が資本主義の枠組みの中で動いている以上そこに乗っかっていくのが一番効率がいいだろうという前提がある。資本主義のシステムでやっている、ビジネスをやっている組織、会社に属することで自分一人ではできないことができたり会えない人に会えたり触れられない課題に向き合ったりすることができる。一人では出せないインパクトを出せるということである。

ただし効率がいいということはそれが必ずしもいいというわけでは決してない。というか逆だろう。資本主義のもとで経済成長を求めさえすればどんどん豊かになっていた時代はたしかにあったがその代償として環境破壊や長時間労働などの問題、性別役割分業・家父長制の強化などがあり、もうわれわれはそこから降りるべきなんだ。

個人的には、資本主義の枠組みで世の中が回っている以上会社組織でしかできないことはまだあると思う。でも同時にオルタナティブなあり方も模索しながらこの成長志向の強すぎる、様々な弊害を無視して経済成長を追い求める社会からは降りたいと思っている。降りるべきだと思う。そもそもあらゆる理由で「会社員」を選択しない/できない人だって大勢いる中で、そればかりが効率いいというのもおかしな話である

この◯活というのも社会のあるべき姿をパッケージ化して「そろそろ就活/婚活/妊活しないと」とプレッシャーを与えるのに一役買っている。すべては今ある社会の形を維持して再生産して強化するため。そういう枠組みも意味をなさないほどに多様な選択肢を自由に選べる社会になってほしい。あーあ。そんな中自分はちゃっかり転活をしてしまったわけです。生き方を考えていかないといけない