絵を買う、ということについて考える。
自分の心象風景をそこに映し出したような、ああ、ここにあったんだね、と思えるような絵に出会うことがある。もう忘れたくないこんなにだいじな景色、どうしていままで思い出せないでいたんだろう、ときゅっと切なくなるほどに懐かしく感じるような絵。そんな絵に出会ったときはなりふり構わず求めた方がいい。たとえば今月はもうお金を使いすぎているとかこの絵を飾るには部屋が狭いとか、そんなことはどうだっていい。自分の片割れのようなその絵を、代替可能な貨幣で買えることが奇跡だし、部屋が狭ければ絵の横で寝ればいい。目を開けたその瞬間から絵がそこにある、なんてすてきな生活なんだ。
というわけで、絵はとにかく買った方がいい。はじめて買うときには緊張する。自分なんかが「所有」してもいいんだろうか、と思わないでもない、けどあなたがどんなに自分のことを「自分なんか」と思っていたとしてもその絵はあなたの隣にあるべきだしあっていいんだと思う 所有なんていうけどその絵は誰のものでもなく ただ自分はお金でその絵をそばに置く権利を得ただけだとも思う あとはやっぱり毎日絵を見てこころの感触がちがったり気づかなかった色彩に目が止まったりすることがとてもたのしい。部屋に西陽が入ると少しオレンジがかるのも、夜の部屋でぼうっと絵が浮かんでいるのも、ぜんぶがいい ギャラリーでは見られない光景だろう
とにかく出会ってしまった と思ったらお金はなんとかなるから絵を買った方がいい