関心領域

ooaaoo
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公開:2024/6/5

ほのかにネタバレあり。

『関心領域』をみてきた。これはたしかに映画館でみる必要があるね、といった映画だった。途中ジェームズ・タレルの『オープン・フィールド』みたいになって意識が地中美術館に飛んでいった。

直島新美術館もできるそうなのでまた行きたい。

塀の向こうから聞こえる音や声に、昨日の横浜トリエンナーレでの展示空間が重なった。見えなくてもずっと聞こえていたウクライナの人々の声。

5月27日のTBSラジオSessionので『関心領域』の日本公開にあわせて、田野大輔さんをゲストに「ホロコーストはなぜ起きたのか?〜『悪の凡庸さ』を問い直す」という特集が組まれていた。終盤で、ヘス夫妻は自分たちの生活が大量虐殺というシステム全体に支えられていることをわかっていたはずで、安易に「悪の凡庸さ」を用いて彼らの責任を矮小化し、彼らは我々と同じような存在だと見るよりは、彼らの現実に目を瞑ろうとしている姿に嫌悪感を抱いて批判することの方が重要ではないか、といった話をしていた。映画でもヘス夫妻の残酷さは常に淡々と描かれていて、観る側に共感させないよう(しなくていいよう)設定されているように感じた。祖母や子どもたち、使用人、地域の家庭、リンゴの女性。目の前で起きていることを知りながら暮らせてしまう夫妻との対比として大切だった。

SNSには、この映画は音による情報が重要なので聾者にはただただ平凡な生活の様子に見えて戸惑うという旨の意見もあった。塀の向こうから聞こえる銃声や被収容者の叫び声。ピアノを弾くシーンでは、ピアノの音にあわせて声にならない言葉がオレンジ色の字幕でのみ表示されたりもしていた。今こういう音が聞こえてる、と説明されて初めて理解できる。こういう場合にはどんな方法で体験のギャップを埋められるんだろう。

入管法の改定と育成就労制度の創設(育成就労法)に関する審議が参議院にうつった。今日も法務委員会で審議が行われているのでみていた。今の法務大臣は小泉龍司議員。私が法務委員会の審議を見始めた頃は森まさこ議員、入管法が廃案になったときは上川陽子議員、そして入管法の改定案が可決されたときは齋藤健議員だった。なので私がよく見てきた法務大臣は主にその3名と現在の小泉法務大臣なんだけど、この小泉法務大臣がなんかめちゃくちゃ笑っている。筋の通った質問を重ねる立憲民主党の石橋議員への回答時にへらへらへらへらしてる。いや、あのね、外国人なんだから差別されて当然なわけ?わかる?なんて言ってないけど言いそうな勢いで笑ってる(近しいことは先日言っていた)。レイシストはよく笑う。

そして最初に質問に立った片山さつき議員の排他的な発言もひどかった。外国人を危険分子としてしか見ていない。危険分子でいてくれなきゃ困るんだろうねってくらい必死でイメージを作り上げてるけど、日本人(日本国籍保有者)と外国人の犯罪率はほぼ同じ。

地元議員からの要望ということで行った質問は、外国人の被疑者が取り調べを受けるときに通訳対応が不十分で取り調べを終える前に放免されるようなことがあるのではないか、と言われるほど色々と問題が“感じられて”いるが、まさかそんな不公平な事は起きてないですよね?という内容で、起きてないと回答されて終わっていた。取り調べ時に言語の壁によって伝えたい内容が正しく伝わらないことを不公平だと言うならわかるけど、そっちなんだ。しかも“感じられて”いるって。そうやって実際に起きている問題は放置したまま、起きてもない問題を提示して不安を煽ることで入管はぶくぶく焼け太りしていく。

日本人と外国人の犯罪率はデータ上ほぼ同じだけど、外国人には手続き上の困難がある。言語の壁によるコミュニケーションの不備もそうだし、弁護士や身元を保証してくれる人を見つけられない社会的な繋がりの希薄さ、経済的な困窮…… 外国人が困難に陥りやすい社会であっても犯罪率は日本人と変わらないのに、まるで外国人の犯罪は見逃されてるような言い方をされる。だからもっと厳しく管理しろ、と。

@ooaaoo
備忘として