喝采

outani_a
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先日、出先の富士そばで遅い夕食をとっていたら、有線でちあきなおみの『喝采』が流れた。改めて聴くと、すごくいい曲だ。メロディとグルーヴがけっこう複雑。「恋の歌うたうわ・たしに/届いた/しらせは」のところの割り方とか、宇多田ヒカル『Automatic』の「な/なかいめのベ/ルで」を髣髴とさせる。悲しい歌詞だけど、曲調は暗くない。リズム&ブルースだ。喪服を着て向かうのもお寺じゃなくて教会だし。

他に客のいない夜の富士そばで聴くちあきなおみ、ベタだが、「都会」ってこういうことだよなと思いながら特選富士そばを啜った(基本はゆず鶏ほうれん草そば派だが、ときどきあのいてもいなくてもいいカニカマに会いたくなる)。

にしても「しらせ」(ハガキかと思ってたけど時代的に電報もあり得る)に「黒いふちどり」がついていたことで「死」を表現するの、現代ではもうあんまりぴんとこないだろうな。最近は喪中/訃報はがきもおしゃれで、薄いグレーか紫できれいな蓮の花の絵がプリントしてあるような感じのが大半だ。

家でもう一回聴こうと思ったら、ちあきなおみ、サブスク未解禁なのな。いろんなアーティストのカヴァーは上がってる。石原裕次郎と八代亜紀ヴァージョンが良かった。坂本冬美版は曲のアレンジがクリスマスソングみたいで笑ってしまった。

歌謡曲/演歌をじっくり聴いてみると、みんな歌がうまい。異様にうまい。当たり前だろという話だが、80年代に生まれオルタナティブロックとチープなシンセポップにどっぷりはまっていた人間にとって、プロのミュージシャンと歌のうまさって、イコールというわけではない。しばらくBGMで昭和の大御所歌謡歌手を流していたが、うますぎる歌は連続で聴くとなんとなく疲れるのが分かった。尾崎紀世彦とか、うますぎて軽くジョギングするくらい疲れる。