(美術)作家というのは際限無く自由のきく職である。好きなことをして飯を食っており、起きる時間も寝る時間も作業時間も自分で決めることができて、人を雇わなければ人間関係について考えることもない。実に愉快な職である。おまけに、なりたければ誰でも美術作家になれるのだ
落とし穴があるとしたら、時間があるとだらけてしまう人、やらねばと思いつつ先伸ばしにしてしまう人、金勘定が苦手な人にはあまり向いているとは言えない。
恐ろしいことに、上記の三つ全てに私は当てはまっている。私は本来、怠惰な人間なのだ。怠惰すぎて就活やその他のことから全力で逃げた結果が"これ"なのがなんとも皮肉な話である。
なぜなんとかなっているのかと言えば、(月15~60万という、いやにギャンブラーな収入をなんとかなっていると言えればの話だが)対策を練ってどうにかしているからだ、もちろん。
たかだか6年弱(正確にはもっと以前から活動していたが、作家を名乗ると決めたのは2018年9月のことだ。)作家面をしてきた身に過ぎないので、以降の文章は小学六年生が教育論を語っていると思っていただけるとちょうどいい。
*タスク管理*
先伸ばし癖というのは厄介なものだ。興味がない作業はとにかく頭が回らない。気力が起きない。切羽詰まると何から手をつければいいか分からなくなり、よくやるべきことを忘れる。
対策は意外とシンプルだった。フォロワーにちゃんとメモしなさいと叱られたことがきっかけで、スマホにデフォルトで入っていたメモ機能を使う癖をつけるようにした。切羽詰まっていたり、偏頭痛で思考がふわふわしている時は上から順番にこなす。そうでない元気な時はやりたいものから自由にやる。
まず朝起きて最初にやることはポケモンスリープ、次がタスクリストの整理だ。昨日チェックを入れたものは朝全部消しておく。現時点で思い付いたタスクを追加する。顔を洗うのはそれからだ。
上のリストは5/14の15時半時点でのリストをそのままスクショしたものだ。今日は調子がいいので、時間が掛かる作業を先に済ませている。 なお、その日のリストとは別にいつかやるリストが存在する。
こっちは主に懐が温かかったり、時間が有り余っている時用のリストだ。これも同じメモにまとめていつでも目に入るようにしておくととても便利だ。
こんなこといつもやってるよ!という人も、私には必要ないねという人もいると思う。しかし私は、私が作家始めたての頃にこんな記事があったら助かったのに!と思った内容であるからまとめることに意味があると判断した。繰り返して言うが、本当に一番これを読ませたいのは6年前の自分だ。
このスタイルが自分に刺さっている要因にはさらに心当たりがある。
このチェックマークを入れていく画面、スカイリムのクエスト一覧にそっくりなのだ。お分かりいただけるだろうか。チェックマークを入れる瞬間、ゲーム脳にたまらない快感が味わえる。チェックを入れると入れないとで達成感が段違いなのだ。我ながらチョロい脳の作りだと呆れるけれど、馬鹿とハサミは使いようである。
また、お気付きかもしれないが、ツイッターの叡知に倣って段階を踏むタスクは細分化している。
(例:洗濯→洗濯回す/洗濯干す/洗濯回収)
重ねて言うが、私は何か作業をしていると頻繁に他のことを忘れる。洗濯だけをタスクに記載している場合、必ずやその日の洗濯物は夜露に濡れる羽目になる。欠点を補うにはまず、欠点を自覚するところからである。
*筋力トレーニング*
あくまで持論だが、作家に必要なものは一に集中力、二に体力である。なお集中力は体力向上によって補えるので実質最も大切なのは体力、つまり筋肉である。
少し恐ろしい話をしよう。無職とコロナ流行がかち合った一年あまりの間、一月に3回しか外出しないような生活を送るとどうなるか、私は身をもって知る羽目になった。慢性胃炎、筋力不足、そして不眠症状。
作家に不足しがちなものとして、他人とのコミュニケーションの機会と運動は外せない。私の場合はとくに、卒業してすぐにコロナで一切友人に会えなかったことが辛かった。それまでは毎日朝から夕方まで制作しながら切磋琢磨(あるいは談笑)していた時間が、一気に失われることはなかなかに耐え難かった。人間は社会的動物であると最も強く認識したのはこの時だった。
今はコロナも落ち着き、対面イベントの数も以前の勢いを取り戻したと言っていい。
さて、もっと能動的に解決しなければならない問題が残っていた。体力、あるいは筋力不足である。出展した次の日に丸一日疲弊し、寝込むような日々に危機感を覚えるのには時間が掛かった。なぜなら、大学時代に蓄積された体力ゲージを過信していたからだ。だが、使われない筋肉は着実に衰えていた。
まだ問題がある。一日中作業しているととにかく腰が痛くなり、肩が凝った。これらも筋力トレーニングで解決できるという文言を読んだ時はまだ半信半疑だったが、結論から言わせてもらおう。腰痛と肩凝りは筋トレで治る。
体力(HP)と筋力を鍛えることは、驚くほど気力に直結していた。早い話が、筋トレをすればするほど絵が描けるようになるのである。最近は筋肉で絵を描いているのでは?と思い出した(追記:そりゃそうだ)
一日の行動ターン数が増え、選べるコマンドが増える。リングフィットでレベルアップするたびにリアルの自分もレベルアップしていくのが実感できた。
あと筋トレをするために部屋を掃除する癖がついたので、部屋が全然散らからなくなった。一生付き合うつもりだった"使ったものを床に放り出す癖"が驚くほど改善した。
ついでにリングフィットは筋肉の名前を教えてくれるので、気付けば人体構造にちょっと詳しくなっている。身体というものがどこまで稼働するのかも身をもって学ぶことができる。美術解剖学を学びたければ、教科書を読むだけでなく筋トレをすると良い。
たとえ週に二回、15分であってもやらないよりはずっといい。1分の運動にはちゃんと1分の分の価値がある。筋肉は必ず応えてくれるのだ。筋肉最高。筋肉を褒め称えよ。
タイトルから随分脱線したようだ。ここまで来ればお分かりいただけるだろう。私の生活はタスクリストと筋トレを中心に回っている。1ヶ月のうち25日くらいはそうなのだ。これがツカナ(パン屋)さんのごくありふれた一日である。