ネタバレあります。たぶん。
吉沢さんの顔を見て、観ると決めた。たしか公開直後の舞台挨拶の映像か、インタビュー映像だったか、そこは覚えてないけど、「憑き物が落ちたような顔をしているな」と感じたから。清々しいというか。元々お美しいけど、以前よりさらに何トーンか明るく見えた。ピカーって光ってた。あくまでも個人的にそう見えただけなんだけど。でもきっとこの撮影でものすごい経験をされたんだろうなと。映像の話の内容はさっぱり聞いてなかったけど、その顔を見た時点で「ああこれは観るしかないじゃないか…」と心が決まってしまった。(もしかしたら物理的に美白に磨きがかかったか照明の加減かもしれないけど)
その後も原作は読んでないし、自分から調べたりはしなかったけど、SNSを開いたら情報は勝手にいろいろ入ってきた。あらすじとか、長期間稽古したとか、どのシーンがどうとか、なんとなく。でも目に付く感想はだいたい絶賛だし、もうハードル上がりまくりだった。ものすごいものを観てしまうんだぞと怖気付いていた。だから観ると決めてから実際に観るまでひと月以上かかった。
先週あたりからはもはや怯えるのにも嫌気が差してきてたので、「映画が始まるまで、頭と心を空っぽにしておこう」と努めた。いつ観に行くか決めて、座席を予約して、時間通りに劇場に着くように準備して座席に座るまで全部ただの「作業」だと意識した。美しいものと向き合うときって、“情”って余計なのかもしれないなと思った。映画を見て、やっぱりそうかもってなったから、私にとってはこの映画は3時間じゃ済まなかった感じがする。観る前から始まってたというやつだわ。いや、わけが違うんだが。
映画は、衝撃を受けるというよりかは、じわじわと負荷がかかっていく感じだった。すごかったとしか言いようがない。だって人様の人生に良いも悪いも言えなくない?ましてや人間国宝だし。「芸がある」「ほかになにもいらない」化け物になっていった喜久ちゃん。出会っては失ってやっぱり一人になって、寂しかった。最後に残ったのはほんとうに芸だけ。得られたのは万雷の拍手と、この才能と人生と何十年もの積み重ねでしか得られない景色。
「ああいうふうには生きれない」ね。ほんとにね。
エンディングも美しい歌声だった。
帰り道運転しながら、喜久ちゃんに人生を狂わされた人たちのことを考えていた。特に女性たちは、結局誰もあまり喜久ちゃんのそばにいられなかったけど、心を分け合って一緒に生きていくには難しいひとだったね。竹野が良い味だしてたなあ。春江ちゃんもなんだかんだ一番長い縁になるのか?あの距離がちょうどいいのかな。
消化に時間がかかりそうだから、時間が経ったらまた何か出てきそうだけど、とりあえず当日の感想は以上。パンフレット買ってきたからあとで読む。