フォークナー「乾燥の九月」

farfalle
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公開:2024/10/11

差別、性暴力、暴力、死。フォークナー的世界の秩序だらけの短編で、大変に面白かったのだけれど、これらを面白がることについて、noteのコードではあまりよくないかもしれない、という自己規制によって、こちらに記録したい。

エミーという妙齢な女性が、「黒人」に暴行されたという噂が立ち、その犯人を「白人」の男たちが、勝手に推理し、認定した挙句、私刑に及ぼうとする。

その「白人」の男たちの中でも、「黒人」であるウィルを擁護しようとする理髪師がいて、なんとか思いとどまらせるように説得するが果たせず、拉致られたウィルと車に同乗するが、説得は無理だと踏んで、車から飛び降りる。

しばらくすると、車は戻ってくるが、そこにウィルがいないことを確かめた理髪師は、怪我をしながら歩いて戻ることにする。

首謀者で、実行犯の一人マクレンドンは、家に帰ると妻に咎められるが、興奮を落ち着けるようにいる。

ストーリーをまとめてしまうと上記の通りだけれど、エミーが友人たちと、事件があったとされる後も映画に行くシーンが描かれるが、実際に何が起こったのかについては、説明しない。

肝心なシーンのところで、カメラがパンになって、登場人物たちの行為の細部ではなく、状況のムードにフォーカスするところが、かっこいい。こういう引きがあるところがフォークナーの良さだよなあ、と再確認。

ハッピーエンドではないし、むしろ世界の暴力性が日常であるという認識を強める作品なのだけれども、そうだよね、という気持ちになって、諦めと同時に生に対する渇望のようなものも浮かび上がってくる。その絶望感、徒労感が、それはそれとして、新鮮な感覚としてある。

普通に、今の私たちの社会でもありそうなシチュエーションだよね。ついこないだも、こんな私刑的な出来事あったんじゃなかったけ。割と、この令和年間の空気と類似、地続きのような気がしてならない。過剰な正義感(禁酒法)と暴力の横行(差別、リンチ)が同時に現れるという点において。