この前とは違うところをブラブラしてきた
桜に関しては、大体もう葉桜になっていた
ただ、今日歩いた道に生えていた桜の木は、色や咲き方などが木によって明らかに異なるようだったので気になってしまった
辺りを見回すと、木のすぐ近くに品種別の解説立て札がいくつも立っており、それぞれ目を通してみたが中々面白かった
例えば、仙台屋(センダイヤ)と呼ばれる品種の解説には、「もともと高知県高知市にあった『仙台屋』という店の庭に植えられていました。この品種の命名をした人は小学校中退ですが東京帝国大学の理学博士号を与えられ、『日本の植物学の父』と呼ばれました」といったことが書いてあった
※中退したのは旧制小学校のうち「高等小学校(高等科)」の方なので今で言うと小卒だと思われる
ちなみに自分が見ていて気になった桜の種類は「紅豊(ベニユタカ)」という品種らしく、明らかに色が濃く、また他と違っていまだに花が多く残っていたのが印象的だった
ベニユタカの解説文曰く、人間が「人為的交配」の結果作り出した栽培品種というやつらしい
ここで、かの有名なソメイヨシノも遺伝子配列が全く同じせいで自力で繁殖できず、人間がクローンを作り出すことで無理やり繁殖させている、という話を思い出した
調べてみるとソメイヨシノに限った話ではないらしく、特に桜の栽培品種の場合は大半が「自家不和合性」を持っている為、接ぎ木などで人為的に数を増やしているそうだ
ということは、このベニユタカもそうなのかも知れない……と思った
人間でいえばハプスブルク家が有名だが、多くの生物が近親交配を繰り返す事のできない仕組みになっているのはなんとも言えない生命の神秘というか、メカニクスの不思議を感じる
…
帰り道を歩いているとき、「一人カラオケ」をする妙齢の女性を見かけた
ベンチに座り、ベビーカーを傍らに留め、電子タブレット片手にドリカムの歌を大声で熱唱しておられたが、何となくこっちを見ながら歌っていた気がしたので目を合わせないように努めた
しかし、歌っていた歌が偶然にも『砂の器』(ハンセン病がテーマの一つ)の主題歌だったこともあり、人間とは……病気とは……遺伝子とは……生きるとは……と、彼女の目の前を横切りながら余計なことを考えてしまった
一つ怖かったのは、俺が彼女の前を通り過ぎて暫くした後、ピタッと歌声が止んだことだ
人が前を通る時だけ歌っていくスタイルなのだろうか?あるいは……