気になる題材が私の周りをぴょんぴょんする

pecopeco
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気になる題材に触れると、それに関するアンテナがビンビンに張りまくる一方で脳や心の稼働率が無駄に上がり、心臓が絶え間なくドキドキして、それがとても疲れてしまい、かといって寝たいわけでもなく、とはいえ何から手をつければいいのかもわからず、どうしたらいいのだろうと途方に暮れる気持ちが強くなる。

興味深い、とにかく興味深いのだ。今日親のAmazon Primeのアカウントで見た映画は『Winny』だった。昨年辺りに『中田敦彦のYouTube大学』で紹介されているのを見て(みんなが彼のことを中傷する理由が未だにわからなかったりも)(いや、本当は知っている)(些事を突つき成功者を否定するStreamに乗っかって盛り上がりたいその気持ち)(私も中高時代に歌い手の自演騒動や配信切り忘れによる炎上に便乗した経験があるから)とかくとても興味を惹かれた。

Winnyという名前は中学生くらいの頃にようやく情報の授業で名前を聞いたくらいだった。とにかく「ヨクナイモノ」「使ってはいけないもの」的お触り厳禁コンテンツとして例に取り上げられていたような記憶がある。だが実際の初公判は自分が小学生の頃。ポストペットパークやshockwaveのミニゲーム、ロボット検索避けもいい加減な二次創作サイトの巡回により視力をすり減らしていた時期、著作権なんて字面や響きでしか知らなかった時分のこと。

作中のメッセージはやはり道具とその利用者の倫理観、制作者の意図を超えた汎用と制作者に帰属する責任性、国家権力の不正や隠蔽へのアンチテーゼ……な〜んて安く言い包んでしまえば楽にそれっぽい記事も書けるだろう。

でもやはり素人目に見て一番強く感じたのは、制作陣の「この一連の事件を風化させてはいけない」「このことについて一人でも多くの人に考えてほしい」という気持ち。その気持ちを最大限かつダイレクトに表現された、そんな作品だったと思う。違法アップロードを誘発する仕組みが悪い、と言われたら確かにそれも一理ある。でもモノには大体いろんな役割があって、たとえばモルヒネに助けられる人もいれば体や心を蝕まれる人間もいる。作中で言われている通り「ナイフを用いた殺人事件で罪に問われるのはナイフを作った人間か、ナイフを用いて犯行に及んだ人間か」という話。「そこに山があるから」登るように「そこにライター(/ガソリン)があるから」放火するわけじゃないでしょう。P2Pシステムは今でも色々な使途で用いられ、ビジネスや技術の発展に貢献している。

金子氏は、たとえばかつて現実逃避をしていた自分が2chまとめサイトの見出しから見出しへ飛ぶように、思いつくままに改良コードをどんどん打ち込んでいくタイプで、おまけにより良い未来のためなら自分が有罪となることもやむなしと考えるような人間だ。息を吸って吐くように意識が高い。確かなスキルがあり、そのスキルをあまつさえ世のために使いたいと考えるような人間の「世のために役立てたい」と願い作ったものが誤った使い方をされる。

それが「凶器を製作した」として罪に問われる。けど本人はこう言う。

「自分を有罪にすることが後続の技術者にとってよい影響をもたらすのであれば、容赦なく有罪にしてほしい」

この人は変に研ぎ澄まされたワーカホリックではない、高潔な意思を持つ方なんだ。度し難い変人ではなく、自分のギフトを生まれた世界に対して還元することを厭わない人種。

この作品は倫理観や著作権についてだけではなく、ありとあらゆるテーマについて観衆の心を深く揺さぶりながら真に問いかける。そのことにふと気づいた時「どの分野を突き詰めても、いずれはこの世の真理について問うものとなる」ことにも同時に気付かされた。大学のゼミである年、ドイツでのいくつかの事例に触れながら「引用と剽窃/盗用」「間テクスト性」等に触れながら著作権について考える機会があった。

そしてつい最近再度著作権について考える機会があったのは、次の仕事が著作権の管理に関するものだからだ。といってもこちらが学術的に考察を深めたりするわけではなく、著作者と利用者の間を繋ぐ事務的な業務が主となる。仕事の仕方にもある程度フォーマットがあり、専門的な知識は必要とはしない。でも求人を見て履歴書に動機を記載する瞬間、どうしても私は当時の学びを思い出さずにはいられなかった。面接をした数日後に出た採用の通知にOKを返してから更に数日、当作がAmazon Primeに落ちてきたのは本当神懸かり的なタイミングだったと思う。

もし適性があれば、今度はこちらに関するスキルを高めて当該分野でのキャリアアップを目指すのもありかもしれない。なんて取らぬ狸の皮算用。

期待値は高めに設定し過ぎないこと。前回の転職で痛いほど身に染みたので、今度は仕事の傍ら過去の業務に関する資格の勉強も並行しながらスキルアップを図ろうなんて思いながら貴重な休日を過ごすのでした。