人生と択ゲー

pencilrocketer
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人生のすべての出来事をゲームとして捉えることが正しくないことは知りつつ、資本主義の中に生きている限り競争することは人生の一部であるというのは妥当だろう。

したがって、ゲームで手に入れた経験を人生に応用するのは間違っていないこともあるはずだ。

この前ふと若い時期においては択を広く持つことが重要だなと思った。

もうすでに若い時期から外れている自分が気がついても遅いのだが、これが有益になる人が世の中にいるはずなので書いてみる。

拡大再生産というボードゲームのジャンルがある。

拡大再生産はジャンルというのももはや正しくないぐらいメジャーなジャンルであり、ボードゲームのゲームデザインにおいて基礎と位置づけても良いぐらいである。

拡大再生産の説明は省くがこれはほぼそのまま人生を例えていると言える。

Aという技能を身に着けて、Bという技能を身につけると、Cの技能を身につけるためのコストとして支払うことができる。というように。

これを無限回繰り返すのが人生といえる。

よくできた拡大再生産のゲームは最初にある程度の択を持つことが勝率を上げることに繋がる。

それは特定のルートが封じられても別のルートにすぐ乗り換えが可能であり、序盤の基礎的な資源は後半にも役に立つことが多いように設計されているからだ。

この点も人生によく似ている。

例えば基礎的な資源の例としては義務教育がある。

人によって義務教育は人生で使えない資源のまま終わってしまうかもしれないが、何かしらのステップアップに利用できる可能性が極めて高い。

そして拡大再生産と同様ゲームの終盤になるほど、すなわち歳を重ねるほど取れる選択肢は減る。

ゲームの中盤までに足場をうまく固めたプレイヤーはいい着順になることがある程度想像できる。

序盤からなにかの能力に全部振っても良いが幅を効かせておいた方が勝率は圧倒的に安定する。

とにかく序盤は択を増やす。

全部の択を拾おうとすると問題があるが、可能な中で択を増やそうとするのは基本的に理にかなう。

自分はボードゲームが好きだったのにこのことを全く理解していなかったと言える。

難易度の高い受験を成功させて良い大学に行くことは択を増やす。

学校の成績で良い評価をを得ることも択を増やす。

増やした択が活かされるかどうかはその段階では全くわからないが、やはり択が増えるのは良いことである。

そして中盤は持っている択を組み合わせて後半に向けての戦略を固めていく。

序盤に獲得できなかった択を中盤から獲得して巻き返そうとするのは基本的に筋が悪い。

今持っている択からどれを選びどのように伸ばすのかが重要である。

終盤は持っている択を最大化するように出てきた選択肢から最良のものを選ぶだけである。

確かにどれが最良なのかを厳密に選ぶことは難しいが、選択肢が狭いので筋の悪い選択肢はもう視界に入ってもいない。

自分は30手前で人生の中盤にいる。

序盤は大成功とは言えないが挽回不可能な状態ではない。

若干狭い択ではあるが中盤と後半の立ち回りを考えて運が乗っかればまだまだチャンスはある。

もしこの記事を読んだ若い人がいるのであれば、択を増やすようにがんばってほしい。

おまけ

ちなみに、この記事を書いているときに想像していたのは私の最愛のボードゲームである7Wondersである。

そのまま、第1世代を序盤、第2世代を中盤、第3世代を終盤と考えた。

この比喩が妥当かどうかはN=1かつ中盤をプレイ中の自分がわかることではない。

ただ直感的には間違っていないように思う。

@pencilrocketer
シアトルに住んでいるソフトウェア開発者です。 不定期更新なので「ひかえめなニュースレター」で気長に読んでください。 @pencilrocketman