旅行記3日目 - イナリ

pepperlandsk
·

朝起きてレストランで朝ご飯を食べていると、昨日の夫婦とまた会うことができた。昨日はトレイルに行くつもりだと話してたが、結局そこまで元気出ず湖の上の散策で済まし、今日再挑戦すると言っていた。Google Mapを見ると、そもそもトレイルのスタート地点にたどり着くまでに30分かかるらしく、ちょっと興味はあったが行くことは無さそうに思えたので、近くのカルチャーセンターに行くつもりだと返した。話題は飲食の話になり、リガと新高円寺の美味しい料理を同時に教えてもらった。新高円寺の駅前のベトナム料理屋とメキシコ料理屋が美味しいらしい。高円寺に住んで4年だが駅前にそんなところがあるなんて知らなかった。明日早朝に旅立つつもりだったので、ここでお別れであろうことを伝える。夫婦は12月ぐらいに日本に戻るとのことだったので、今度は4人で日本でご飯を食べようと約束した。

カルチャーセンターは1時間もすれば用事が全部済んでしまいそうで、他にもすることがなかったので、とりあえず宿の裏手の湖の上を歩き回ることにした。イナリ湖は相当に広く、琵琶湖の面積の1.5倍ぐらいらしい。ただの凍った湖なので、道らしきものは当然ない。行き先も適当で、スノーモービルが踏み固めた跡が歩きやすいのでそれに沿って歩く。自分の行動が全く言葉に発せられないまま決まるのが気持ちいい。湖の対岸に行くと林に辿りついた。白い空に白い地面、木の葉にも白い雪が乗っかり、枝の斑模様だけが強調されている。雪国に住めるとは全く思わないが、こういう幾何学模様はとても好き、写真の撮りがいがある。フィルムカメラと一眼で交互に写真を撮った。

(Hotel Inari、501号室に宿泊。左の建物が受付で、裏手がイナリ湖)

(イナリ湖)

林から戻ってホテルの部屋でだらだらしていた。そういえばカルチャーセンターに行くんだったと思い出してまた外出する。カルチャーセンターは映画館やカフェなどを併設しているらしく、遅めの昼ご飯を食べるつもりだった。15時ごろに着くも、ちょうどカフェが閉まる時間だった。結局引き返し、スーパーでグラタンとインスタントラーメンを買う。フィンランドにも日清が出しているカップヌードルがあったが、お湯を捨てるタイプで、どっちかというとカップ焼きそばに近い。

なんとなくインスタを見ると今朝の夫婦がトレイルの写真を上げていた。トレイルコースの脇には川が流れているらしい。氷が浮いた川の景色が綺麗で、無性に羨ましくなる。16時で日もほとんど落ちかけているが、行かない後悔はしたくないと思い立ち、トレイルコースに向かうことにした。40分歩いたところに吊り橋があるらしいのでそこを目的地にする。誰もいない車道や歩道を無心で歩き続ける。何より車に轢かれるのが一番怖い。車の気配を感じる旅に頭につけたヘッドライトを振って存在をアピールした。

できることなら歩かず/登らずに綺麗な景色を観たい、過程より結果が大事、往復する気力の自信がない...とか考えてると思ったより早く吊り橋に到着した。見た感じ吊り橋は氷結していたが、いざ渡るとしっかり揺れるタイプの吊り橋だ。今の体感温度は-25℃とからしいが、これで川に落ちたら体感温度どころじゃないだろうな、とか考えていたら無性に怖くなってきた。数枚だけ写真を撮り、そのまま逃げるように引き返した。途中腹痛に苦しむ。正直遭難するんじゃないかと思っていたが、なんとか無事に宿に着いた。

(凍り付いた吊り橋、手がかじかんでピント合わせは失敗)

三度目のホテルのレストラン。楽しみにしていたトナカイ料理を注文した。ローストかソテーか選べたが、貧乏性が働き安い方のソテーを注文することにした。無愛想なウェイターが持ってきたのは、バラ肉の炒め物の周りをマッシュポテトで囲んだもので、作り途中のもんじゃ焼きを思い出させる不思議な見た目をしていた。味は鹿に似ているが、ハーブで隠してはいるものの獣臭が更に強い印象。

食後に宿が放送しているライブカメラを観てると、気のせいか空が緑っぽく見える。朝の夫婦と連絡をとると、どうやらオーロラではないかということらしい。ほぼ諦めかけてたがまさかの最終日にチャンス!ということで慌てて撮影機材を準備する。三脚を立てようとすると、何故か雲台が外れており見当たらない。どうやらさっきの吊り橋付近で落としたらしい。オーロラ撮るために何十万も投資したのに、こんな土壇場で不運なことある!?どんだけ普段の行い悪かったんだ!と自分を呪うが、とりあえず三脚だった棒も担いで湖に向かう。

空を見上げると、確かに雲ではない白んだ靄のようなものが空に浮かんでい他。ネットで調べていた通りだが、弱いオーロラはカメラを通してでしか色がついて見えないらしい。実際カメラのファインダー越しで見るとちゃんと緑色に見える!!慌てて一眼で写真を取ろうとするが、先ほどまで三脚だったただの棒はなんの役にも立たなそう。水筒とリュックでむりやり斜面を作り、そこにカメラを直置きして何とか撮ることができた。

部屋に戻り、落ち着かないまま撮れた写真を見返す。カメラはキンキンに冷えて氷観たいになっているがそれどころではない。三脚が生きてればもっといい画角で撮れたのに...と思いつつ、紛れもなくオーロラを撮ることができた。

オーロラの写真を簡単にレタッチする。撮ってる間も思い返していたが、そもそも何でオーロラが観たかったのか自分でもよく分からない。観たいというより撮りたかったのかもしれない。なんにせよ衝動的にここまで来てしまった自分を思うと笑えてきた。せめて視認できるほど強いオーロラが出てたらまた思いも変わってたかもしれないが、やはりオーロラを撮れたというだけでとても満ちたりた気分になった。次こそはオーロラを観たいし、次こそ三脚は万全に準備したいし、ともかく次の目標ができたことが嬉しかった。

(イナリ湖、オーロラ)