熊の出没、それに伴う被害が深刻だ。
当地は田舎なので、野生の熊が出没すること自体はさほど珍しくない。しかし、その現れ方が問題だ。
まず回数。あまりにも頻回だ。毎日のように「どこどこに熊が出たので付近の方は注意するように」という防災メールが届き、受信フォルダがすぐいっぱいになってしまう。一日に複数回届くこともある。
続いて出没する場所。これまでは、山に入った人や山間の集落に住んでいる人などがその周辺で目撃していたが、今年は、何車線もあって交通量が非常に多い国道のそばやビルが密集する市街地に堂々と姿を現している。
更には攻撃性の高さだ。これまでは、人間に出くわすと熊の方が逃げたり身を隠したり、或いは人里に下りて来ても留守中の民家に忍び込んで食べ物を食い荒らしたりキャットフードをかっぱらって退散したりする「こっそりパターン」が多かったが、当節の報道を見ていると、どうも熊の方から人間を襲いに来ているような印象を受ける。山間部でもないのに自宅の敷地内で襲われ亡くなった方があるとか、庭に繋がれていた飼い犬がさらわれたとか、そんな話は今まで聞いたことがない。熊に遭遇した人が車の中へ逃げ込み、クラクションを鳴らして追い払おうとしたものの車体に体当たりされたケースもあり、「人工音に怯まないのは特殊な個体だ」と驚きをもって伝えられていた。
頻回に市街地に現れる、人間の生活圏を脅かすなどこれまでにない動向を見せている野生の熊だが、不思議なのは、これが一部地域ではなく全国的に多発していることだ。職場の人は「百匹目の猿現象だ」などと言っているが、そう思わざるを得ないような事態に陥っている。
当地では、市街地であってもいつどこで熊に出くわすか分からない状況だ。これまでは、県警発信の防災メールにより熊の出没情報を得ていたが、市でも独自に熊情報を配信するようになったことを知りさっそく登録したところ、隣町で熊の目撃情報があった旨の通知が飛び込んで来た。エー!ちょっと勘弁して!隣町のどの辺なんだろう!ともう少し詳しい情報がないか地元紙や全国紙地方面のネット記事を調べたところ、何と私が住む町でもついに目撃情報があったという。
職場の人には「帰り大丈夫か」と脅かされ、生きた心地がしなくなり更にあちこち調べてみたら、私の町で目撃されたのは住宅街ではなく川原だったことが分かった。川原であれば多少安心だ。すると今度は、隣町や私の住む町から少し離れた地域で熊が出たというメールが入り、恐らく同じ個体が川伝いに移動しているのだろうと職場の人と話した。やはり川が熊の通り道になっているようだ。
いずれにせよ、そこら辺にちょっと買い物に出るのにも周囲を見回して警戒しなければならないのは、どう考えても異常である。また、熊が市街地に現れるたび警察が何時間も遠巻きに様子を窺うという対応には限界があるように思われる(警察が悪いと言っているのではない。念のため)。そうしている間に行方知れずになってしまった熊もいた。大人しく山へ帰ってくれていれば良いのだが、被害が拡大する懸念もありもっとどうにかならないものだろうか。