時間という特異資源

piyama
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個人に与えられた"時間"という資本は、仕事という営みを通して、別の資本へと置き換わる。そしてこの"時間"という資源には、複数の資本に同時変換できる特異性がある。

国際統合報告評議会(IIRC)が公表している国際統合フレームワークによると、資本は財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本の6つに分けられる。

  1. 財務資本:金融資産など、いわゆるお金や有価証券。

  2. 製造資本:製品の生産又はサービス提供にあたって組織が利用できる建物や設備、インフラ等の製造物。

  3. 知的資本:特許や著作権、ソフトウェア、権利及びライセンス等の知的財産権や暗黙知、システム、手順等、組織的な知識ベースの無形資産。

  4. 人的資本:人々の能力、経験及びイノベーションへの意欲等。例えば、組織の戦略を正しく理解して実践する能力。プロセスやサービスを改善するために必要なロイヤリティ及び意欲など。

  5. 社会・関係資本:個々のコミュニティ、ステークホルダー・グループ、その他のネットワーク間又はそれらの内部の機関や関係、及び個別的・集合的幸福を高めるために情報を共有する能力。共通の価値や行動、共有された規範、組織が構築したブランド及び評判に関連する無形資産を含む。

  6. 自然資本:組織の過去、現在、将来の成功の基礎となる物・サービスを提供する全ての再生可能及び再生不可能な環境資源およびプロセスのこと。空気、水、土地、鉱物及び森林や生物多様性、生態系の健全性等を含む。

引用:レイヤーズコンサルティング 非財務資本管理(製造・知的・人的・社会関係・自然)

多くの人は働くことで時間は給料(財務資本)に変換し、それによって生計を立てる。ここで私が興味深いと感じるのは、"時間"という資源は同時に複数の資本に転換する点である。

例えば、飲食店でキッチンスタッフとして8時間シェフの仕込みの手伝いをした時、そのスタッフは8時間分の給料(=財務資本)と料理の能力(=人的資本)、そしてシェフとの信頼関係(=社会・関係資本)を同時に培っている。

キャリア形成における不確実性と向き合う時、"時間"という特異資源の戦略的資本転換をデザインできれば、ボラティティも抑制できるのではなかろうか。