人気のない道をひとり歩く。途中で冷たい雨に遭遇して身体が冷えたり、台風みたいな強烈な風で身体が飛ばされる思いもしながら、ひたすら歩を進める。やがてアスファルトで舗装された道路は土肌が露出した獣道に変わり、私は目の前の草葉をかき分けて目的地に向かう。次第に勾配が大きくなり、両足にかかる負荷が増す。汗がじんわり額を湿らせてこめかみからつーっと雫が垂れる。前を歩いているはずの人に追いつきたいので、歩くペースを上げる。肩で息をする。むわっとする草木の匂いで思わずむせそうになる。腰から下に気怠さを感じていると、突然見渡しが良い場所に出た。眼前に広がるのは切れ目が確認できないくらいの広くて深い溝。これ以上先に進むことはできないかもしれない。軽く絶望したけど、その事実にどこかホッとしている自分もいた。少し休憩したら、引き返そう。