仕事終わりにmと食事。会うのは一ヶ月ぶりだろうか。向かう電車内で上司のFさんにメッセージを送っていて駅で降りそびれてしまう。お店に到着して通されたテーブル席に座っていたmは心なしか少し疲れて見えた。ここ3ヶ月で胃腸炎やコロナに罹り、仕事の人間関係でストレスが溜まっているという。
前日買ったトートバッグと本を何冊か譲る。私たちはお揃いの物が多い。キャップにパーカー、スマートウォッチにトートバッグ。けど、今更そんなことが僕らの関係改善に何の寄与もしないことを私はわかっている。
もう一つこれまでと変わったことに気づく。彼女が会話している途中になんの躊躇いもなくiPhoneを取り出して知らない誰かとメッセージをしている。どうやらその誰かはジムでナンパされた11個歳下のインストラクターで、大して興味がないディズニーランドに一緒に行ったり、今度は野球観戦に行くと言う。
歳下すぎるから絶対に付き合わないというが、楽しそうにエピソードを語る彼女といる空間が途端に居心地が悪くなり、大して食べたくもないモツ煮や飲みたくもないワインを頼む。
帰宅してから口にした、たらこのおにぎりはただただ塩っぱくて、海苔をバリバリ音を立てて食べたかったのに手に取ったそれは裸の米の塊で、なぜだか悔しくて、でも誰にもそのことを話せないことが寂しかった。