ふと思い浮かんでしまったので、以下、メモ代わりに…駄文を。
FF7リバースチャプター12の世界線とケット・シー、そしてチャプター14の後のザックス。僅かに交わる世界。
ネタバレになっちゃうので、リバースの展開について知りたくない方は読まない方がいいです〜。
──────────────────
キーストーンの行方についてディオの話を聞くべく、クラウド一行は再びゴールドソーサーを訪れていた。
ケット・シーは仲間達と離れ、モーグリに乗ってゴールドソーサーのエントランスを歩いていた。
クラウドにはキーストーンを手に入れた後の心配について話をしたばかりだ。ケット・シーの思いのままに、モーグリは足早に飛び跳ねて前へ進む。ディオを探さなくてはならない。できれば仲間達よりも先に。そしてキーストーンを手に入れなくては。
「ん?なんやろか…」
ケット・シーはエントランスの端、ベンチの付近に奇妙な光景を見つけた。
虹色にゆらめく淡い光を見たのだ。光はすぐに消えてしまい、後には一人の男がそのベンチに項垂れて座っている。
「…あれは…」
光を見る前、そのベンチには誰もいなかったように見えた。
今そこに座っているのは大柄な男だ。少し長めの黒髪を後ろに流していて、筋肉質な体躯はクラウドと似た服装で…そう、彼は黒いハイネックの、神羅のソルジャーの服を着ている。驚いたような顔をして、彼は周囲を見回している。
「あのお人は…!」
ケット・シーは驚きの声をあげた。目前の彼の情報は、神羅のデータベースを閲覧照合するまでもなく、もう何度も見たクラウド・ストライフの情報と共に頭に入っている。
ケット・シーは騎乗していたモーグリから飛び降り、四つ脚で慌てて彼へ向かって駆け出した。
────────────────
「ここは…」
ザックス・フェアは少し前にセフィロスと戦い、メテオの脅威を目前に突如として陥没した床に落ち、再び世界を渡る事になった。そしてつい今し方までは伍番街スラムの教会の椅子で休んでいた筈だ。…その筈だった。
戦いに疲れ、いつの間にかうたた寝をしていたらしい。
周りを見渡せば、輝く電飾、人々の明るい笑い声。流れる軽快な音楽に合わせ、目の前には踊っている男女が見える。
「ゴールドソーサーか…?…っ!」
ザックスは立ちあがろうとして目眩を覚え、ベンチに腰をおろした。身体が重い。怠い。実験で魔晄に長い間浸されていた為だろうか、あの時魔晄中毒だったクラウド程ではないが、あれ以前のような、どれだけ動いても身体にみなぎっていた力が、体力が今のザックスにはもう無い。一年ばかりの逃亡生活の間にこの重怠さにはもうすっかり慣れたが、追手の神羅兵と生死を分けるような戦いに身を投じた後はいつもこうだった。ましてやさっきのはセフィロスだ。セフィロスと対峙して生き残る事が出来るとは…ラッキーのマテリアも今は持っていないのに、相変わらずの運の良さには我ながら驚く。
ザックスは装甲付きの革手袋の拳を握りしめては開いた。
クラウド──・・・僅かだが、さっきクラウドと肩を並べて一緒に戦った。ほんのちょっと前までは、長い間意思の疎通すらできなくて、この魔晄中毒が治るならどんな事でもしてやりたいと願っていた相手が、自力で立って、意思を持ち、バスターソードと変わらぬサイズの大剣を振るう。しかもあのセフィロスに向かってだ。クラウドのその姿には歓喜が溢れた。まだその喜びがザックスの心に、体に高揚が残っている。
だがほんの片時で世界は分かれ、クラウドと離れ離れになってしまった。…それでもあの時確かにクラウドは意識を、自我を取り戻し、セフィロスに何度薙ぎ払われても力強く立ちあがり、戦っていた。最後に見たクラウドは、落下するザックスに向かって手を伸ばしていた。クラウドがあそこまで回復した。なら…
「お姉ちゃん、死んじゃうの。間に合わないの」マリンの言葉が…ザックスの胸を締め付ける。クラウドが回復した。それなら、エアリスも目を覚ましたかもしれない。そしてエアリスが目覚めたなら、マリンの見たのが夢でないなら、エアリスはセフィロスに…そんな恐ろしい想像を打ち消すように固く目を閉じ、ザックスは拳を握り締めた。
…クラウドは間に合ったのだろうか。クラウドはセフィロスからエアリスを守ってくれただろうか。
戦っている時は、風を感じた。そこに、エアリスと共にいるような、見守られているような気すらした。だが今は抑えても抑えても、いてもたってもいられないような焦りと不安が湧き上がる。
エアリス、無事なのか…ずっと眠ったままの彼女の、開かない瞳。彼女の美しい緑の眼を、可憐な笑顔をもう随分長く見ていない。
会えない間エアリスが書いてくれたという88通の手紙は今どこにあるのだろう。…公式には死亡と発表されたザックスの、神羅にいた頃暮らしていた宿舎にそれが届いていたなら、手紙についてはツォンに聞けば何かわかるのだろうか。
…ツォンに聞きたいことは沢山あった。秘密裏の実験が行われていた最中はともかく、脱走後にシスネから報告は受けただろうに…助けてはくれなかった…見捨てられたのか。…信頼していたのに。
ザックスは握りしめた拳で、苛立ちのまま腿を叩いた。
いったい今はいつで、世界はどんな様子なのだろう。また、わけもわからないまま妙な世界に送り込まれたのか。
「わっかんねぇ…」
俯いているザックスの耳に入ってくる、行き交う人々の声に、戦争や空から降る厄災の、暗い陰の気配は感じられない。場所が場所だからなのかもしれない。ひょっとしたらここゴールドソーサーは、世界が終わる日にもこんな風なのかもしれない。
世界がどうであれ、自分は戻らなくてはならない。ミッドガルの、伍番街スラムのあの家へ。すぐ帰ると、エルミナと約束した。
…ここがゴールドソーサーなら、ゴールドソーサーからミッドガルへ戻るにはまずは…コスタ・デル・ソルへ向かうか?前に、コスタへは何度も行った。船が出ていた筈だ…ジュノンから乗った…。そうだ、コスタからジュノンへ向かう、ジュノンからミッドガルへは…
「あのぉ〜…」
ちょっと素っ頓狂な、聞き慣れないイントネーションの声に、それまで考えを巡らせていたザックスは顔をあげた。
目の前には白黒の模様の猫、…なんだ?ネコの…ぬいぐるみ?
ザックスは眼を瞬き、ザックスの目の前で二本足(おまけにブーツまで履いている)で立っているネコを見つめた。子どもの入ってる着ぐるみだろうか?
「ちょーっとよろしいでっか?隣、空いてます?」
「あ、あぁ…、どうぞ」
ザックスはベンチの横を、喋りも申し出も奇妙なネコに譲った。
──────────────────
…続く、かな?