※本の細かい内容や結末のネタバレがあります。
前から気になっててやっと読んだ。事前情報として「ホラー、気持ち悪い内容」というかなりざっくりしたあらすじみたいなのは知ってたけど、それだけじゃない要素がいっぱい織り込まれた話で面白かった。
アマゾンの自然や生息するサルの調査に参加した小説家が話の始まりで、現地民に伝わる「悪魔のサル」が話題に出たときにオカルト的ホラーなのかなと身構えて読んでた。
その悪魔のサルを調査団が空腹に負けて食べたシーンは異形を食べる展開で呪われたんだなと思ってた。人魚食べて不死になっちゃうアレで。
実際に調査から帰ってきた小説家は「天使の羽ばたき、囀りが聞こえる」という非現実的なことを言い出して、恋人の医者が戸惑うくらい態度や性格が変わってしまう。呪われたせいで何かに憑かれたんだなと思った。
そしてどんどん変貌していった末に小説家は自殺してしまうけど、アマゾン調査に参加した他のメンバーも不可解に死んでしまってからはオカルトで済まない謎が見え始めて読んでて引き込まれた。
結論から言うとアマゾン調査団が食べた「悪魔のサル」は寄生虫が巣食ったサルで、それを食べた人たちは寄生虫に感染しちゃったという事だった。ここら辺は寄生虫の研究者が登場して色々な説明があったから説得力あった。
でもそのせいで「天使の囀り、羽ばたき」のすごくおぞましい実態が分かってヒィ~~!となった。
羽ばたきが耳奥から聴こえるのは寄生虫が脳へ進行する音で、囀る声は脳を弄られて聴こえる幻聴だった。これだけでもおぞましいけど、寄生虫は脳の快感を司る箇所に巣食って人間の恐怖を快感に変える作用を起こすのがえげつなかった。
人間が勝手に神秘的だと感じて生まれ変わったみたいに生き生きしだす裏で寄生虫が全身を蝕んでるギャップが何とも言えない。
寄生虫がものすごい悪魔に感じるけど、でも自然の摂理でそう進化してるだけというか、ただ生物としての本能を全うしてるのは理解できるから唯すら気味悪かった。
読み終わった今感じるのは、こういう生物的な考えと人間的な考えの相容れない部分が一緒になってる話だなって事かも。
寄生された人間の最終形態は身体すら変形して寄生虫が蠢く袋みたいになっちゃうんだけど、その状態でも生きてる人たちがいて、その内の一人が「コロシテ」って言うのがやるせなかった。
もう人として生きていけないのは明白で、だけど最期の最期に歌を歌いながら死んでいくシーンが本当しんどかった。人間らしいことして死んでいくのがキツイ。
このシーンで感染者を殺したのは医者で、実質この話の主人公みたいな人。この人自身も職業上のギャップに悩んでるところがあった。
助からない末期の患者を苦しませながら生かしてるんじゃ。みたいな事考えてて、担当してる子どもの患者について心を痛めてた。
それで話の結末には寄生虫を子どもの患者に使って、死の淵の苦しみを楽しい心地で満たして逝かせてあげるって事をしてた。
これがすっごい個人的にはドン引きするのと理解できる気持ちが綯い交ぜになって、よく分からない感情のまま読んだ。
子どもの患者は確かに死ぬ瞬間は人間として幸福だろうけど、そんなおぞましいものを使うのか……?!っていう気持ち。
総括すると面白い本だったけど、それと同じくらい重い気持ちになって疲れる本かもしれない。