11編の短編が載ってた。前に読んだ自選集の『憂国・花ざかりの森』よりこっちの方が好きな話が多かったかも。
自分が好きな話はこれかな。
「翼」「クロスワード・パズル」「真夏の死」「貴顕」
一番目に載ってた「煙草」も良かった。少年が背のびして青年の情緒を知ってしまった末、自分の思春期を失う感覚みたいなのを書いてた。
表題の「真夏の死」は海難事故で親族三人を一気に失う夫人の話。悲劇ではあるけど当事者の生臭い心境と、死という普遍的な現実がかけ離れて書かれてて何とも言えない気持ちになった。
「子どもを失った夫人ならこうあるべき」「こんな悲劇にあった私(夫人)ならこう慰められるべき」っていう自他それぞれの反応が、一事象としての死を過剰に飾り立ててるところが何とも言えない。そういう反応も人間なら極自然にする反応だと思うから尚更。
「貴顕」はすごく好きな話だった。もしかしたら今まで読んだ三島作品の中で一、二を争うくらい好きかも。
お金持ちの青年が自分と美術について煩悶しながら生涯を終える話。青年は生きていく上で不自由しないお金持ちで、他人に感情を動かさない生き方をしてる。ただ在るだけの美術と同類みたいな人が、病床ですごく生に苦しんで人間臭くなった末に綺麗な死に顔になるのが印象的だった。
それで最後に青年の父親である美術評論家が傍に現われるの完璧なラストシーンで良かったな。
三島由紀夫はまだ読んでない作品あるからまた読みたい。読むと普段の読書以上に頭使うから苦労するけど。