ケット・シー

pocho
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PS5のゲーム「FINAL FANTASY VII REBIRTH」について書きたいので書く。(ネタバレ含みます)現在引くほど時間を溶かしています。日常タグに混ぜるのもどうかなと思ったので分けた。最近は空き時間ができると即PS5を起動しているので、ある意味日常といえば日常。

ミッドガルという街の中でほぼ一本道のルートを進むだけだった前作REMAKEに比べて、今作は出来ることがものすごくたくさん増えたので物語の本筋以外に相当時間を費やしている。広大なフィールドを探索してモンスターを倒し、クラフト素材を拾い宝箱を開け、チョコボに乗って地面からアイテムを掘り返し、各ポイントを周ってエリアデータを集め、クエストを達成したら報酬を貰い、気が済むまで歩き回ってマップを足跡で埋めたら次のエリアに移動。ようやくストーリーが進んだと思ったら合間に大小様々な種類のミニゲームがギッチリ詰め込まれていて、やり込み始めたらキリがない。気が付いたら睡眠時間を減らしてまでプレイしてしまっている。山ほど用意されたタスクをこなし、わたしにはとにかく早く先に進みたい理由があった。

このゲームはリメイクされたもので、27年前に発売されたオリジナルの作品が存在する。今これを書くために何年前か調べてびっくりした。そんなに経ってるんだ…。その原作をプレイした時に、大好きだったキャラクターがいた。彼を早く仲間にしたかったので、序盤を急いで駆け抜けた。

ケット・シーという、デブモーグリに乗ったネコ型ぬいぐるみロボットだ。

前作では物語の進行上ムービーに出演するのみで、今回ようやくプレイアブルキャラクターになった。要するに戦闘画面で動かせるわけで、右に左に歩かせられるわけで、嬉しすぎてずっとパーティーに入れている。デブモーグリに乗ったり降りたりしながらダイスを転がして出た目で行動が決まったり、かわいいぬいぐるみをたくさん撒いて地面を散らかしたり(なお敵に当たると爆発する)トリッキーな戦い方が出来るのがすごく楽しい。

関西弁で話す。台詞は基本、場違いなくらいテンションが陽気。ゴールドソーサーというテーマパークで客相手に占いをしていて、不穏な占いの結果を主人公クラウドに突きつけ半ば強引に仲間入りした。そのテーマパークは主人公たちが敵対している神羅カンパニーという企業の運営する施設で、メンバーはこのネコ型ロボットが果たして信用出来るかどうか分からないまま、神羅の人間だということを把握した上で受け入れる形になる。道中も、スパイじゃないのか? とか普通に疑われている。スパイです。物語を進めていくと明らかになる中の人の正体は、神羅の都市開発部門統括でスーツを着た真面目そうな面持ちの、リーブという男性。ミッドガル市民の事などミリも考えていないような奇人変人ぞろいの幹部の中で、都市開発という仕事柄もあり唯一真っ当な人間に思える。そんな社長直下の偉い人が、何故だかネコ型ロボットを操り(原理はよくわかんないけど操れるらしい)反神羅とも言える主人公たちと行動を共にしているわけである…本当になんで?? 満室だった神羅経営のホテルにハッキングして空きを作ったり、指名手配中のクラウド達の写真データを書き換えて別人にしたり、神羅のシステムに入り込んだ大胆な行動もやってのけてしまう。重役の肩書のみならず実践的なエンジニアの技術も高いらしい。隠密に動かなければならないスパイにしては怪しまれる要素が多すぎるが、裏側に精通した要人しか知り得ない情報で主人公達を導いてくれる。

でも今作の彼は自分がただのぬいぐるみ、ゴールドソーサーのかわいいマスコットキャラクターだとアピールすることで、スパイ疑惑から逃れようとするあざとさがある気がする(それが成功してるかどうかは別として)。かわいいモーション付きで語尾に「にゃん」を付けるとか、どうかしてるよ。プレイ前は声が付くことに心配もあったけど全くの杞憂だった。戦闘中操作キャラクターを切り替える瞬間の、キャラクター同士の掛け声を聞くだけでもう嬉しい。原作では他キャラクターより少なかった必殺技も、今回はたくさん用意されている。連携アビリティが全部かわいくて(バレットとのにゃんこキャノンが特に好き、耳打ちしてる…そそのかしてる感じが)ありがたすぎて震えた。たくさん喋って動いて戦うケット・シーを見て、このゲームをリアルタイムで追いかけられる幸運、今日まで生きてて良かったなあ…みたいな、大袈裟な感情が生まれてしまった。リメイクしてくれて公式、心からありがとう。拝んじゃう。

このゲームでもうひとり、自分が気になっている存在がいる。バレットという、反神羅活動を扇動していた向こう見ずで気性荒めなキャラクターだ。過去に神羅が建設した魔晄炉というエネルギー設備のせいで故郷を焼かれ、神羅に大事な人をたくさん奪われている。神羅を憎み、魔晄炉を稼働させたままでは環境汚染が起こり星が滅びてしまうという名目の元に、ミッドガルで爆破テロを起こした過去がある。その行為によって一体どれ程の被害があったのか分からない(爆破自体に神羅による自作自演も含まれていたり、複雑)。彼の気持ちは収まらず、ミッドガルを出てクラウドらと旅を始めてからも神羅に対する強い憎しみをしばしば発露する。故郷を失ったのは魔晄炉建設を反対しなかった自分のせいだと後悔したり、やはり神羅が悪かった、当然の報いだと自らのテロ行為を正当化したり。神羅に人生を振り回され揺れ動く彼が、突然現れた神羅製のネコチャンと行動することに対してどんな思いを抱いていたのか。それが気になっていた。

ケット・シーはスパイなので、当然ながら裏切り行為が発覚するイベントが用意されている。神羅にもまともなやつがいると思っていたのに、とバレットは怒り、他メンバーの心も離れる。FF7は主人公クラウドが宿敵セフィロスを追う話で、クラウドがセフィロスに囚われていることに気付き、仲間の助けもあって次第に自分を取り戻す…というのが物語の要だとわたしは思っている。クラウドはいつも自分とセフィロスのことで手一杯で、きっとケット・シーが裏切ったところでさほど気にはしていない。裏切り行為のあとケット・シーがクラウド達を助けるイベントを経て彼はまた仲間として迎えられるのだが、その直後にはこのゲーム最大の衝撃的な出来事が待ち構えている。大多数のプレイヤーもクラウドと同様にそれどころではない、という気持ちだろう。でも自分はめちゃくちゃケット・シーのことが気になっていたし、どうして彼がクラウド達と行動を共にしようと思ったのか、裏切り行為をするまでにどんなドラマがあったのか、もっと掘り下げて! そのあたりを!! と原作プレイ当時は机を叩いていました。1人で。でも初プレイの時は自分が子どもだったので物語を深く理解しておらず、彼の良さが全く分かっていなかったし気にも留めていなかったと思う。その後何回も繰り返しプレイすることで、どんどん惹かれていった感じだ。

前作REMEKEで、爆破テロによって一部壊滅したミッドガルを見下ろしてがっくりと肩を落とすケット・シー、というシーンがある。被害を食い止めるために駆けつけたが間に合わなかったという様子に見える。中の人リーブは、バレットやクラウド達が行ったテロ行為の惨状を目の当たりにしている。その上で(スパイ行為も含めて、どのような経緯があったのか分からないが)主人公達と接触することを決めたわけで、彼の心中に思いを巡らせてしまう。とりわけ爆破テロを先導したバレットには並々ならぬ感情があった…みたいなことがアルティマニア(公式攻略本)に書いてあった。しかし爆破による被害は反神羅組織アバランチの所為だけではない。ミッドガル市民の命を軽視した社長の横暴とはいえ、リーブが所属する神羅にも確実に責任の一端がある。この出来事で彼は心底自分の無力さを痛感したのではないか。

ケット・シーは関西弁で話す陽気な猫型ロボットのキャラクター、それだけではない。動かしている人が別の場所にいて何かしらの感情を抱えながら、時には自らの所属している企業をも相手に、クラウド達と共に戦っている。ネコの姿のまま突然中の人が関西弁ではなく標準語で話し出すシーン、それがまだ自覚もしていなかった自分の「癖(へき)」にぶっ刺さった瞬間の胸の高鳴りをいまだに覚えている。この二面性、そのギャップにわたしは惚れ込んでしまった。髭のおじさんがネコ操ってにゃんにゃん言ってるの、すごい二面性だよね。意味分かんないよね。

…という話でした。それだけを伝えたいがために、ここまで長文を書いた。FF7のキャラクターは表面的に見えている部分だけではない、意図的に隠しているものがそれぞれ内面にあって、だから魅力的なんだと思う。どのキャラクターも人間臭さがあって愛しく、親しみを感じる。

REBIRTHはようやくラスボス前まで来ました。まだ終わってもないのにもう三作目が待ち遠しい。この先、複雑な感情を抱えた者同士のケット・シーとバレットが些細なきっかけで口論になるシーンがあり、リメイクでもきっちり描いてくれるといいなあと思っている。自分が注目しているからかもしれないが、そのイベントに至るまでの伏線もちゃんと今作で用意されていると感じる。まさか27年経って、ここまで「好き」を再確認出来ると思っていなかった。本当にありがとうございましたスクウェア・エニックス。ケット・シーのブリングアーツ買うね。

@pocho
しずかな備忘録 / 日常、飼ってる柴犬のこと、今はFF7リバースに夢中 / 普段はタイッツーにいます taittsuu.com/users/pocho_rm