メモ
原作/脚本:押井守
監督/キャラクターデザイン:沖浦啓之(ひろゆき)
全体的な感想
セリフが少なく、間を読ませる感じとか心象風景やメタファーの表現、童話の赤ずきんになぞらえて物語が進んでいく構成面白かったし、画作りがすごく勉強になった。
アニメはアニメの表現、実写は実写の表現として別個に考えていたけど、基本的にやっていることは同じなんだなと初めて思った。
し、この作品は実写でも撮影可能そうなシーン(写し方?)が多くて、それが物語全体のリアリティを増幅している気がした。(と思ってたら実は違うらしい…)
色味も終始どんよりしていて、色彩が人に与える印象の大きさを感じた。
実写だとここまで暗くしているのはあまり見たことない気がするし違和感がありそうなので、これはアニメならではの表現なのかなと。
そしてライティングの重要性をすごく感じた。光と影がめちゃくちゃかっこいい…
冒頭のナレーションと静止画で物語の背景を語る部分も効いていて、陰鬱とした時代背景とか発展途上の社会の不安定さ、暗い話が始まるんだろうなあというのがよく伝わったし、実際最後まで暗かった。
ドキュメンタリーを見ているようなリアルさと没入感があって、すぐに引き込まれる感じがある。
ラ・ジュテみを感じた。
細々したところの感想
オープニングクレジットからタイトルロールまでがとにかくかっこいい。
もし自分が映画を撮るなら、ここに1番時間をかけたくなるんじゃないかと思った。洋画だとよく見るけど、そういえば邦画はあんまりオープニングクレジットとかないよなあと思った。でも物語に没入する上ですごく大事な部分だと感じた。
そして1番好きだったのは、メタファーと思われる表現だった。
デパートの屋上に括り付けられたバルーンの群れをすり抜け、ひとつの小さな風船が空に消えていく。女は、どこか遠くの街で全く別の人間として生きていきたい、と言った。
終盤にも2人は同じ場所を訪れる。
自由への憧憬、それが主人公と女を繋いでいたのだろう。
バルーンのシーンの直後、主人公は突如冒頭に訪れた地下道に移動し、そこで目の前で爆死したはずの少女を見つける。
追いかけているうちにさっきまで隣にいた女に姿を変えた人物は、主人公の周囲にいた狼に食い殺される。そこで目が覚め夢だったことが明らかになるが、唐突なシーンの切り替えによって、主人公にとっての悪夢が現実と切り離されたものではないということが明らかになる。
主人公は緩やかに繋がった日常と悪夢の中を、亡霊のように彷徨っているのではないかと思う。
終盤の、公安の男が主人公から逃げ惑い、最後に扉のような形をした壁に辿り着くシーンも、まさに絶望といった感じで好きだった。主人公が見た夢の中に出てきた格子の扉、そして地下道に続く扉も、同じ形をしていた。(もしかしたら同じものかもしれない)
そう言えば特機隊としての主人公は1人も殺していないなと思った。罪悪感なのかトラウマなのか、殺すのではなく、いっそのこと殺されてしまいたいと思っているのかはわからない。
役割で殺すし、主人公もまたその役割に殺されようとしているのかなあと思った。
感想文ってこんな感じでしょうか…
落とし所がわからなくなってしまったけど、とにかく好きな作品だった。
またみたい。