(割とネガティブな内容が多めです、ご注意ください)
前提として、僕はプログラミングが好きでそのまま職業プログラマになったタイプの人間なので、プログラミングが好きです。
なのでプログラミングであれば多分四六時中できます。
しかし、(toCアプリかオープンソースかに関わらず)自身の作品を伸ばしたいと考えている個人開発者にとっては、プログラミングは全体の作業時間の恐らく1割にも満たないでしょう。むしろ、プログラミングに割ける時間はご褒美と言ってもいいかもしれません。
多くの個人開発者は、作るのが好きで、作りたい作品があって、そしてそれが良い作品だと信じているので、作ることは得意なはずです。
ただし、良い作品を作れば必ず伸びるというわけではありません。
インフルエンサーの目に止まったりして最初から伸びるケースももちろんありますが、多くの場合は認知もされずに埋もれていきます。ですから、個人開発者は作った作品を「認知してもらう・使ってもらう」ための活動を行う必要があります。
Kuma UIの挑戦と課題
僕自身、自らが作者を務めるKuma UIというOSSを伸ばすために今年一年奮闘してきて、結果としてある程度うまくいきました(どうして伸ばす必要があったか、どうやって伸ばしたかについては以前JSConfで発表したのでこちらのスライドをご覧ください👇)。
スライドでも述べている通り、僕は「英語を話す海外の開発者たち」をメインターゲットとして普及戦略を練っていました。オープンソースのように対象ユーザーがソフトウェア開発者というとても狭い範囲に限定される場合、日本人だけを相手に広報活動を行っても母数が足りないからです。
そして海外の開発者に向けて広報活動を行うという経験は、(結果的に一定の認知度は獲得できたものの)自分にとってとても大変なものでした。少し力尽きてしまった、というのが正直な感想です。
詳しくは書きませんが、Kuma UIがプチバズりして海外に認知された結果、文化的な違いが原因で一部地域の方々から批判を浴びることもありました。
そしてそれとほぼ同じタイミングで、Roasting(いわゆる煽り)で有名な海外インフルエンサーがTwitterで2分にも及ぶKuma UIへの煽り動画を投稿しました(こちらは単純にライブラリ自体について)。
煽り動画は公開された直後から瞬く間に伸びて、彼のことを全く知らなかった当時の僕は、批判が重なっていたこともあって落ち込んだ素振りをみせてしまいました。すると、彼は後に以下のようなツイートを残して該当動画を削除しました。
今になって思うと、これが僕にとって運命の分かれ目だったのだと思います。
どんな形であれ、英語圏にリーチできる絶好の機会を僕は棒に振ってしまったのです。ここでhtmxのように何か気の利いたジョークでも返せていれば状況は変わっていたでしょうし、たとえ変わらなかったとしてもその振る舞いは後に大きな自信になっていたと思います。
個人開発で世界と戦うために
Honoの作者であるyusukebeさんも以前OSSで世界と戦うためにという記事で「声を上げることは昨今のOSSでは強力な戦闘力になる」と仰っていたように、インフルエンサーに取り上げてもらうことはとても強力な生存戦略です。どんな形であれ、"認知されている"というのは無名に圧倒的に勝ります。
Kuma UIは一時的に海外に名を轟かせましたが、継続的に英語圏にリーチ可能な基盤を持つことには失敗しました。(これ自体はとても有難いことですが)Twitterのフォロワーも大半が日本の方です。
僕自身も当初目標としていたGitHub1000スターを獲得したことでどこか満足してしまったのだと思います。本来であればコミュニティを活発にするためにTwitterやDiscordで積極的・継続的に情報発信していくべきでしたが、今はあまり活発に活動できていません。
僕が別でコアコントリビュータを務めていたMillion.jsというOSSでは作者のAiden氏の他にもう1人Tobiliobaという人物がコアメンテナを担っていて、彼は全くコードは書きませんが様々なイベントで発表したり、TwitterやDiscord運営など精力的に広報活動を行なっています。
OSSに限らず、現代のSNS社会においては、精力的に広報活動できる人はとても貴重かつ強いのだと思います。
幸いなことにKuma UIは非常に技術に長けたメンバー陣をメンテナに据えています。これだけのメンバーを擁してスターが1K止まりなのは、僕の力不足といって間違いないと思います。
2人の個人開発者の背中を追って
さて、僕が尊敬を超えて畏敬にも近い感情を持っている日本人の個人開発者に、先ほど紹介したHono作者のYusukebeさんとInkdrop作者のTakuyaさんのお2人がいます。
彼らは自身で作品開発を行う傍ら、英語圏に向けてその作品の広報活動も積極的に行なっています。
Takuyaさんに至ってはご自身でYouTubeチャンネルも運営されていて、国内外から非常に高い評価を受けています。僕自身も彼が4年前にあげた「個人開発で食うという生き方」という動画に大きな感銘を受けて個人開発を始めたクチです。
お2人に共通する点として、お2人とも英語圏のバックグラウンドがないにも関わらずこれ程の快進撃をみせている点です。英語をネイティブのように操れずとも継続的に英語で広報活動を行なっているのを見ると、言語の壁を言い訳する余地はありません。
広報力という点に重点を置きましたが、もちろん彼らの作る作品それ自体がとても素晴らしく、技術力に非常に長けていることは紛れもない事実です。
しかし、それだけが彼らが個人開発者として成功した要因ではなく、開発以外の地味な作業をひたすらに続けてこられたことは想像に難くありません。
そんなお2人を見ていると、自分もまたもう一度世界を相手に挑戦したいなぁと思うわけです。
作りたいアイデアは沢山あります。Kuma UIにももっと改善したい箇所が沢山あります。時間は無駄にはできません。
これからも沢山頑張りたい、そんな決意表明でした。