ただ寒いだけの季節なら良かった。
季節が混じり出すと気持ちも乱れる。風が吹いただけで泣きたくなる。アスファルトが痛い。歩き疲れて外灯の下でしゃがみこんだ。手が悴んだあの日がもう懐かしい。
氷がとけるみたいに記憶も消えていく。まだもどかしくて死んじゃいたくなるようなものも、いつかはきっと失くなっている。幸福な記憶は忘れていく。何時ぞや戻るのにはもう遅い、なんてこと、当たり前だ。
本当に忘れたくない事は紙にでも書き殴っておくべきだ。丁寧に日記をつけてもいいけれど、私には向かない。
だからどうか、どうか
貴方に触れた記憶だけは、このまま。