土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

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生ぬるい雨よりきっぱりと冷たい雨の方が現実を見なくていい。硬い土を雨水が柔らかくしていく。目の前でカエルのカッパを着た女の子を思い描く。黄色い傘を差して、下を向きピシャピシャと雨遊びをする。笑ってはいなくてどこまでも不思議そうにするその表情は子ども特有だ。きっと私も今は我に帰らなくていいのだ、と思った。消えるのは幻想でも残像でもなく実体としての貴方で有るなんて、私が最も知りたくないことだ。

言葉にして綴ることでまた傷つく。針でチクリと刺されたような、はたまた苦々しい気持ちになる。女の子のカッパの深緑が頭に残る。

貴方の残像を両手に抱えた私は

傘も持てずにずぶ濡れだ。

故、今は泣いてもきっとばれないのだろう。

と、思ったところで我に返った。