薬の話。

purpurfarbe
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その昔都内で働いてたとき、周りの風景に似つかわしくないような小さくて古い薬局があった。普通に市販薬をいろいろ売っていたんだけど、ドラッグストアと違って値引きを一切していないところだった。

でも昼休み中に胃薬を求めて駆け込んだ自分の顔を見て「その胃痛は食事に関するものですか、それともストレスからですか」とわざわざ聞いてくれるようなところで、ストレスからですと答えたら見たことがある薬から知らない薬まで出してひとつひとつ効能などの違いを説明してくれる丁寧な薬局だった。

そもそもその違いで薬が変わるという知識すら無かった自分は相談料込みだと思って定価でも気にせず利用してたし、地元のお客さんらしき人もよく見かけた。3人くらい入るともういっぱいな店内だったけども。

「この場合だとこういう薬もあるんですけど、うちでは扱ってなくて道路挟んで向こうにあるドラッグストアには置いてありましたよ」なんて説明までしてくれるその薬局は、駅前再開発によって今は姿を消してしまった。『タイパ』なんて言葉もあるように今はなんでも速くて安いが求められる時代だけども、ああいうお店の存在が許される時代は今よりもう少しみんなの財布も心も豊かだったのかもしれないなぁと思ってみたりする。