ニュースについての日記

さと
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正直、ここまで話題になっていてびっくりした。皆さんの関心がある、ということで、悪いことではないのではないでしょうか。

ちなみに制度の骨格として大事なのはここ。

厚労省は10月から、特許が切れた先発薬のうち、後発薬の発売から5年以上が経過したものや、後発薬への置き換え率が50%以上になったものの自己負担を引き上げる。先発薬と後発薬との差額の4分の1を保険適用外とする。4月19日付けの事務連絡でヒルドイドを含む対象品目を示した。

この記事からだと、

後発品を使用する場合は、現行の負担と変わりはない

②別に「ヒルドイド」を狙い撃ちにした制度ではない。(今回の制度の対象は約1000品目:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247591.pdf

ということがタイトルに目眩ましされて気付きづらくなってて、さらに、各自治体が講じている「乳幼児・小児の医療費助成」が絡まって、今回の制度についてというより「ヒルドイド無料配布について」みたいな話になっている。それが悪いことでは全然ないのですが。「配布」という言葉選びに色々にじみ出てますがそこはまあ、はい。

追加でこれが載ってなかったな、という情報についてだけ先に言っておきたい。

患者側が後発品を希望しているが先発品を調剤すべき・するしかない場合(流通不全・適応の違いなど)は保険適応となる(現行のまま)

医師が治療上必要で先発品を指定する場合は保険適応となる(現行のまま)(処方箋記載にこの枠が増える)

なんで、「医療機関の都合なのに負担が増えた怒」ってことはないかなと。まあそもそも先発品しかなくて負担増えとんじゃと言われたらそれまでなのですが、今って正直「あるだけマシ」みたいな状況ですんで……。すみませんね……。

まあ世の中の先発品希望はだいたい本人の希望なので、差額が発生するケースが多いと思われます。

今回の薬剤料絡みの制度の今までと違う点は、「保険適応自体から外れ、自費となる」という部分。「自己負担割合にかかわらず同じ金額の差額がのしかかる」ということですね。今までは保険の中でしか差額がなかったため、負担割合が1割の高齢者・公費を使われている方や、自治体の助成で自己負担のない方にとっては、「どっちでも払う金額が変わらないなら高い方で」みたいな心理が働きやすい状況でした。1割と3割では差額が3倍違うわけだからね。

もちろん、極めてセンシティブな薬(免疫抑制剤など、都度血中濃度を測定して効果を判定するもの)などで、「行く薬局ごとに違うメーカー出されるより、同じものを継続して使いたい」などの理由から先発品を希望されることもあります。(でも今回その辺も対象品目に含まれていて、後発品への移行が進んでるんだなあと実感した。)また、後発品メーカーの不祥事から、信用に値しないと考える人もいる。一人ひとりの中に妥当な気持ちがあって、それを尊重しつつ治療をしていくことが大事なので、そこにどうこうという気持ちはないのですが。

ただ、割合としては「なんとなく」(≒差額が大きいなら後発品でいいかな……派)の方が一番多いんじゃないかと思う。今回のは、この「なんとなく」派を減らしていこう、という取り組みですね。

薬剤費を圧縮して皆保険制度を維持しよう、という流れの中では、差額の自費化はまあ、遅かれ早かれ感がある。今回は差額のうち1/4が自費扱いになりますが、順次自費の割合が上がるのではないかと思う。それでもだめなら特定の薬が保険から外れるかもしれない(でもまあ、そういう薬って基礎疾患の受診のついでにもらってる人が多いから、どれくらい効力があるのかわからないが)。

今回大きく話題になったのは小児のヒルドイドですが、一番金銭的に食らうのは、「薬をいっぱい使ってる先発希望の高齢者」だよね。小児がよく使う薬(風邪の対症療法や喘息の薬などを想定しています)は言っても古くて薬価が下がりきってる薬も多いから。

1錠1000円近い薬を毎日飲んで病状をコントロールしてる人もそれなりにいるし、10種薬飲んでたらそれぞれの差額が積み重なるわけで。試算してみようとも思ったけれど、計算があんまりにも面倒だから10月まで待つか……という感じ。

 


現行の保険による医療の給付って、各種国家資格者が質を担保している、という設定で、ゆるく運用されている部分がある。たとえば、ただの皮膚の乾燥、本来であれば市販でニベアを買いなさい、というべきところを、もともとかかりつけの人だから、「皮脂欠乏性」などと診断をつけることで治療の対象とし、保湿剤を処方したり。

「厳密に言えばそうすべきでないこと」がまかり通っているのは、医療を提供する側とされる側のモラルでギリ許されてるみたいなところがあると感じている(許すなという話は今は置いておいてね。実際に健康と不健康の間は線できっちり引けるものではないため、裁量はあるべき分野だと思っています)。

ただ、例えば、子どもが自治体の施策で自己負担額なし(保険・自治体が医療費を肩代わりしている)になっているのをいいことに、他の家族の分まで処方してもらう、使用する、それを公言する、人にすすめる。

医療を提供する側も、それに乗じるように「相手がほしいものを配る」ようなことをする。

まあそんな様相になったら制度自体を厳しくする方向になるよね。という話でもある。これをやる絶対数が少なくても、声がデカいとそりゃ規制されるでしょうよと。高齢者の湿布もそう。なにかデカイことが起きると、それを鎮火するために全体の制度としてはいびつな対処をせざるを得なくなる。

ここ数年で、健康保険制度の隙間を突いてあくどい商売をするところも増えてきた印象で、そのために今後はより厳密で緊縮した医療になっていくのだろうな。


今回の制度の個人的な懸念点。

  • 「医療上必要とされる変更不可」が正しく運用されるか。

    →多分無理。医科側のインセンティブは現状「一般名処方加算」のみ。患者からの差額についてのクレームを処理する方が大変だと思われるので、「医療上必要」に✓を付けることになるのが大半だと思われる。

    一般名処方加算に、変更不可回数によるカットオフ値を付けるような形があってもいいのでは。

  • 薬局での裁量がどの程度あるのか。

    →裁量がありすぎると「患者希望」のラインの判別がつけづらい。統一見解で請求する薬局と、甘く判断して請求する薬局とが出てくる。不正請求でもあるし実質割引行為になる割に、言い逃れがいくらでもできる。

    「医療上必要」については薬局での判断はしないで済む(処方箋に必ず記載される)ようになってくれると嬉しい気持ちが……。いや、全然やりますけど、しっかりラインは明示してほしい。

  • 「医療上必要」って何よ!?

    →今後疑義解釈で出るんだろうけど、例えば湿布の「かぶれてしまう」は「先発品でないとかぶれる」なのか「特定のメーカーではかぶれる」なのか不明。本来の目的を考えると、後発品の別メーカーを試してみるべきだと思うのだが、なんか適応になりそうな空気を感じている。言ったもん勝ちですね。じゃあ副作用ではない「剥がれやすい」は? とか、無限に出てくる。剥がれについては「意図した治療効果を得られない」ということでOKになるのかな。ということは、「患者が不安がり、治療に支障をきたすため」とか「認知機能を鑑みて、名称が変わると服用間違いをきたすため」とかも理由としてでてくるよねえ。でもそうやってどこまでも拡大解釈できると、この制度自体が無意味だし、やっぱり「言ったもん勝ち」になってしまう。疑義解釈が待たれるね。

まあ、こういう制度は最初っからうまくいくことはないし、「まずは導入」というところだろうから、順次整備されていくといいですね。

 


一番大変なのは国民への周知だよね。まあ医療に限らずいろんなことが刻々と変わっていってて、私も多く取りこぼしているのでしょうが……。マイナ保険証のことを思うと、なかなか大変だなと。(私は推進派です)

「なんで当たり前のように受け入れてるんだ?」と思われそうですが、まあ、「そうなることはわかっていたし避けられなさそうだったから」です。

「自分の身近な分野では長年取り沙汰されていた問題」の対応策が仕組みとして表にでてきたときは「やっとここまできたね」と思うけれど、知らない分野は本当に知らないから、「その仕組みが妥当なのか?」「そもそもそれって問題なの?」などの判断がつかず、現状維持のための批判をまずしてしまいがち。

金融所得への保険料徴収とかも、「金融所得で裕福に暮らしている高齢者をターゲットにした世代間不均衡に対する施策では」と言われるまで、「私のNISAは!?」しか思ってなかったし。(今後どう広げられるかわからない、という点では注視したいと思っていますが)

Twitterって、「その分野をかじって生活している人」がたくさんいるのがいい。昨今はだいぶ妥当っぽい人を探すのが大変になってしまったし、「その分野」が多岐に渡ることによる負の側面も目に付くようになってしまいましたが。


さて、これからも今回のような医療費削減のための施策は行われていくと思います。

スマホの機能が充実して価格もどんどん上がっているのに生活必需品である、というのと同じで、医療も数十年前に比べたらものすごく高度なものが提供されている。高価なものを買うために節約をする、に近い検討は常に続けなければいけないと思う。収入は税金と保険料なのだからね。

@quale
私のクオリア