王妃の話6

木津川結
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 そこから先のことは説明するまでもないでしょうね。

 聖域にいた一年足らずのことはわたしもあまり思い出したくないの。苦しかったのは危険が迫ってくることでも、暮らしに困窮することでもなく、外の様子が人の話づてにしかわからないことだった。その話を聞いて次の行動を決めるのは母で、その母は自分の信じたい話しか信じないようになっていた。

「おまえの叔父はお父さまを裏切ったのよ。お父さまは彼を信じておまえの弟を託したのに」

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui