あの人も、宮廷の者たちも、そのことは決して口に出さなかったけれど、誰もがそれを意識していることをわたしは知っていた。陛下の敵の妻、次の王妃になるかもしれない女だって。
ヘンリーが海を越えてやってくる前に、わたしを別の夫に縁づかせておくべきだって。
だからって、誰が考えるかしら。まさか国王その人がわたしの結婚相手に名乗り出てくるなんて。
もちろん身に覚えのない話だった。わたしにも、あの人にも。
すでに話したとおり、あの人は王妃のことしか視界に入っていなかったのだから。
――わたし?
わたしのほうは、その噂話をどう思っていたのかって?