王妃の話12

木津川結
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 あの人も、宮廷の者たちも、そのことは決して口に出さなかったけれど、誰もがそれを意識していることをわたしは知っていた。陛下の敵の妻、次の王妃になるかもしれない女だって。

 ヘンリーが海を越えてやってくる前に、わたしを別の夫に縁づかせておくべきだって。

 だからって、誰が考えるかしら。まさか国王その人がわたしの結婚相手に名乗り出てくるなんて。

 もちろん身に覚えのない話だった。わたしにも、あの人にも。

 すでに話したとおり、あの人は王妃のことしか視界に入っていなかったのだから。

 ――わたし?

 わたしのほうは、その噂話をどう思っていたのかって?

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui