あの人のことはもちろん幼いころから知っていた。父の弟なのだから当然ね。
最初の記憶にあるのは、わたしがまだ五歳にならない時分だから――あの人は十八くらいだったのかしら。まあ、とてもそんなふうには思えないわ。子どもだったわたしの目には、あの人はずいぶん大人に映っていたのね。
あの人はどうしてロンドンにいたのだったのかしら
ああ、そうね。あなたの言うとおり。あの人が預けられていた北部の貴族と、当時の王であるわたしの父との関係が悪化したから、あの人は父に呼び戻されたのだったわ。
わたしがあの人をはじめて見たとき、あの人は父と一緒だった。ちょうどロンドンに着いたばかりだったのかしらね。
わたしは父の姿を見つけて、大喜びでふたりのところへ駆けていったの。父はわたしを抱きとめて、両腕で持ち上げて、わたしを褒めたり頬ずりしたりしたあと、わたしに隣にいたあの人のほうを向かせ、おまえの叔父上だよと言った。
「はじめまして、叔父さま!」
わたしは人見知りをしない子どもだったし、父が側にいて幸せな気持ちだったから、とても明るくあの人に挨拶したわ。
あの人は父に比べるととても小さくて痩せていて――わたしは父に抱かれていたから、あの人を見下ろすかたちだったのよ――父のような目を惹く華やかさはなくて、何も知らない人には父の弟ではなく従者にでも見えたでしょうね。わたしを見上げる目はちょっと驚いたような、戸惑ったような色をしていて、わたしにどう接したらいいのかわからないようだった。そのくらいの子どもと話すのははじめてだったのかしら、そんなこともなかったと思うのだけど。
「エリザベス王女」
結局、あの人はたった四歳のわたしに礼をとり、それこそ従者のひとりのようにうやうやしく名乗って、父を笑わせていたわ。
これがわたし、イングランド王女エリザベスと、後に国王リチャード三世となる叔父、グロスター公リチャードとの出会いだった。