王妃の話10

木津川結
·

 あの人はたぶん、傍目に見て愛情深い叔父ではなかった。若いころと同じようにめったに笑わないし、話さないし、わたしのことは王妃や側近に任せて、自分は政務にかかりきりだった。

 意外に思う? あの人はこの国のために毎日熱心に働いていたのよ。戦でこの世を去ってからは、まるで自分の権力を守ることだけに必死だったように言われていたけれど。

 わたしには意外でもなんでもなかった。あの人は昔からそうだったから。いつだって、この国のため、そしてわたしの父のために、自分の力を惜しまず注ぎ込んでいたから。

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui