王妃の話7

木津川結
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 母はことあるたびにそう言ってあの人を蔑み、わたしのことを睨んだ。まるでわたしのこともあの人の姪だという理由で憎んでいるかのように。

 下の弟があの人の使いに連れ出され、あの人が王として戴冠したことを聞いてからは、母は恨み言をこぼすよりも実際に行動することに移っていった。あの人に奪われた王位を取り戻すために。

 王位はあの人のものでも弟のものでもなく、母のものだったのよ。少なくとも、母の側にずっといたわたしには、母がそう思っていることを肌で感じていた。

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui