「うん。ちょっと眠い……」
「横になったら?」
今度は前に倒れ込みそうになっている佑の顔をセナは覗き込んだ。肩に寄りかかられた時の緊張で忘れかけていたが、佑は昨夜もその前の夜もわずかしか眠っていないのだ。
荷物の中から枕の代わりになるものを探そうと立ち上がりかけると、佑の手が肩に置かれた。
「膝を貸してくれ」
「え……」
戸惑っているうちに座り直させられ、佑が再び体を傾けて今度はセナの膝に頭を預けた。
何が起きたのかわからず、セナは意味もなく身じろぎするが、佑の頭が落ちそうになって慌てて体勢を整える。
「贈り物の返しはこれでいいから」
「え……」
「してほしいことと言っただろう」
佑はそれだけ言い残すと、静かになって寝息をたてはじめた。セナの膝を枕にして本当に眠っている。看病していた時から佑の寝顔は何度も見ていたが、これほど無邪気に眠っている顔ははじめて見る気がする。
なぜか気恥ずかしくなって、セナは目線を上げた。 あたりには暖かい空気が流れ続け、二人を包みこむように陽が降り注いでいる。
ずっとこのままだといいのに、とセナはあらためて思った。