石の名は3-7 《完》

木津川結
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 セナは木の小箱を、佑はそれに繋がる紐を手にしたまま、しばらくどちらも無言だった。

「もう一度、やり直していいか」

 そう問われ、セナはようやく箱から手を離した。いったん落ち着いた胸がまた強く打ち始める。

「――うん」

「じゃあ」

 佑は両手から小箱を吊したまま、セナから半歩下がった。こちらもまた緊張の表情が戻ってきている。セナの小屋で最初にそれを渡してくれた時、前の晩に言葉で伝えてくれた時は、まるでつかえがなく自然な流れだったのに。

 わずかな間を永遠のように感じながら、セナは待った。

「おれの妻になってくれるか」

 佑は言った。

 セナはうなずき、差し出された小箱を手に取った。

「――はい」

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui