セナは木の小箱を、佑はそれに繋がる紐を手にしたまま、しばらくどちらも無言だった。
「もう一度、やり直していいか」
そう問われ、セナはようやく箱から手を離した。いったん落ち着いた胸がまた強く打ち始める。
「――うん」
「じゃあ」
佑は両手から小箱を吊したまま、セナから半歩下がった。こちらもまた緊張の表情が戻ってきている。セナの小屋で最初にそれを渡してくれた時、前の晩に言葉で伝えてくれた時は、まるでつかえがなく自然な流れだったのに。
わずかな間を永遠のように感じながら、セナは待った。
「おれの妻になってくれるか」
佑は言った。
セナはうなずき、差し出された小箱を手に取った。
「――はい」