王妃の話15

木津川結
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 わたしの考えが変わったのはいつだったのかって?

 どうしてわかったのかしら、わたしの考えが変わったということを?

 言葉の端々に表れてしまっていたのかしら。あの人のことを本当は許していたことを。あの人がわたしの父や、弟たちや、自分の妻や、この国のことを心から愛していたとわたしが知っているということを。

 そうよ、わたしはそれを知っていた。自分でも意識しないうちにね。

 あの人がどんなにこの国のために身を削って働いていたか。病身の妻をどんなに案じて思いやっていたか。宮廷にいて毎日あの人の姿を目にしていれば、あなただって嫌でも知ることになったでしょう。

 あの人が父への忠誠も敬愛も失っていないということは、他でもないわたしへの態度でわかった。

 愛情深い叔父ではなかったのにって? ええ、あの人は笑わないし、優しい言葉もかけてくれないし、傍目に見ていれば義務のために姪の面倒を見ているようにしか思えなかったでしょうね。

 でも、誰が言ったのかしら。義務が他の動機に劣るだなんて。

 あの人にとって義務は、言いかえれば忠誠は、常に最上位にあるものだった。いつだって忠誠に縛られていた――あら、知っているのね、あの人の銘を。そうよ、あの人は自分自身が王位についてからも、父への忠誠に縛られていた。そのためにわたしのことを尊重してくれたからと言って、それが情のない行動だったと言い切れるかしら。

 母でさえ認めたくらいよ、わたしが宮廷で手厚く遇されていたということは。

 不満に思っていたのは、わたし自身くらいだったのかもしれないわ。

@quitecontrary
小説の下書きのようなもの lit.link/kizugawayui