「もっとも、この戦いでいちばんの手柄を立てたのはおまえだよ、エリザベス。わたしがロンドンを留守にしている間もお母さまと弟を守ってくれていたのだから」
父はあの人を褒めたあと、必ずそう言ってわたしのことも讃えてくれた。
わたしは父が大好きだったの。父に褒められるため、感謝されるためだったら何でもやった。自慢の娘、自慢の王女だと言われるのが何より嬉しかった。
ひょっとしたらそのことが、あの人とわたしの最初の共通点だったのかもしれないわね。
次に人々の話題に上ったのは、あの人の結婚のことだった。
もちろん知っているわよね、ランカスター家の王太子の未亡人、アン・ネヴィルとの結婚よ。アンの姉イザベルはあの人にとっては兄のジョージと結婚していたから、兄弟ふたりはネヴィル家の財産をめぐって争うことになり、大変な騒動と醜聞に発展してしまった。わたしは子どもだったからよくわからなかったけど、父が弟たちの仲裁に頭を悩ませていたことだけはよく覚えているわ。
あの人と妻アンの関係はどうだったのかって?
わたしがそれを知ることになるのはもっと先だから、今は話を先に進めましょうか。
わたしにとってのあの人は、父の忠実な弟。それだけだった。
たまにロンドンで会っても、姪のわたしを可愛がってくれるでもないし、あいかわらず寡黙で面白いことは何も言わないし、慕わしい大好きな叔父さまとはいかなかった。
ただ、父が何かにつけてあの人を褒め、頼りにしていることを隠さなかったから、わたしもあの人を自然と信頼してはいたわ。ジョージ叔父さまのほうは信用ならないけれど、リチャード叔父さまは何があっても父の味方だし、父の家族であるわたしたちのことも大切に思ってくれているって。
同時に、わたしは少し嫉妬していたかも知れないわ。わたし以上に父に信頼され、父のあらゆる懸念を預かることのできるあの人に。