あの人を評価しているみたいに聞こえるかも知れないけれど、この時のわたしはまだ、あの人が父を裏切ったことを許していなかった。
あの人と顔をあわせる機会はそれほど多くなかった。ときどき王妃のところへ来るのに居合わせたくらいね。
アン王妃は、あなたも知っているでしょうけれど、王妃になる前から病で床に臥していた。宮廷に来てからのわたしは病室に毎日通って王妃の話し相手になっていて、そこにあの人が様子を見に来て同席することがあったのよ。もちろんわたしの様子ではない、王妃の様子よ。
あの人は病身の妻をとっくに見限って、次の結婚相手を早くも見繕っていた、なんて当時からすでに言われていたけれど、誓って言えるわ、そんなことは絶対になかった。毎日欠かさず王妃の顔を見に来て、医師から容態を聞き出して――わたしの見ていないところでも――そんなところを見ていたら、とてもあんな噂を信じようとは思わないはずよ。あの人がアン王妃の早い死を願っていたなんて。
姪であるわたしと再婚するために、王妃を毒殺しただなんて。
この時のわたしはすでに婚約していた。大陸にいたランカスター家の後継者、ヘンリー・テューダー――つまり今の夫と。