瞼を持ち上げると、佑の顔が目の前にあることに気づき、セナは小さく悲鳴を上げて飛び起きた。
あたりはほとんど明るく、火はいつの間にか消えていた。セナと並んで向かいあうかたちで横になっていた佑は、セナの声で目を覚ましたらしくゆっくりと身を起こした。
「おはよう。眠れたか」
「うん。あ……ごめんなさい、起こしてしまって……」
「おれも充分寝られたから。一昨日よりあたかかかったから火を消したんだ。寒かったか?」
「ううん……あ……」
セナはこの時はじめて、一枚しかない掛け布を自分がすべて使っていることに気がついた。
「あ、ありがとう……あなたは寒くなかったか」
「少しも。じゃあ、支度するか」
「うん……か、顔を洗ってくる」
セナはそそくさと立ち上がり、佑に背を向けて小走りにその場を離れた。
同じ場所で眠ったことくらい何度もある。そもそもが一つの小屋で一緒に暮らしていたのだし、看病をしていた時は悪くなった時に備えてできるだけ近くで休むようにしていた。
それでも今の距離には心臓が飛び出るかと思った。もう薬師と患者ではないせいか、気持ちを確かめあった後だからなのか。