「こうなったら――論破しかありませんわね」
「は?」
エリザベスの決死の覚悟が声から伝わったのか、リチャードが再び視線を上げた。
「ヘンリー・テューダーに直接レスバを挑むのです。正統性は間違いなくこちらにあるのですから、ランカスターの王位僭称者など陛下の敵ではありませんわ」
「つまり、SNS上で一騎撃ちに持ちこめと」
エリザベスは深くうなずいた。
そもそもの目的はリチャードがヘンリー・テューダーを打ち負かすことなのだ。ユーザーの好感を集めて地道に味方を増やすことができない以上、残された最終手段は本来のターゲットを叩くことである。
「SNSの民は意外と議論好きで、議論に強い者を崇める傾向にあります。陛下が圧倒的正しさでヘンリー・テューダーを討ち破れば、その様にスカッとしたユーザーたちから喝采を浴びることができますわ」
「そう簡単にいくものなのか。相手はずいぶん口が巧いように見えるが」
「心配はご無用です。ヘンリー・テューダーは外面がいいだけで、主張することはあちこちに綻びがございます。要するに口先だけの男です」
「――きみの婚約者だろう」
わずかに引いた様子でリチャードは指摘したが、毎日の発信について話していた時のように面倒そうな顔はしなかった。ちまちまとまわりくどいことをするよりも最終的な目的にまっすぐ向かうほうが性にあっているのだろう。