
正直なところ、寡聞にしてお名前しか知らない。流石にお名前は聞いたことがある。しかしグループなのか、個人なのか、男女どちらなのかも知らない。
喜志駅についても何も知らない。東京生まれ神奈川育ち、大阪には近しい親戚も住んでいない。関西という括りにしてもいない。
大阪訪問歴は4回。初回は学生時代、母校の応援で甲子園に赴いた時、ほぼ乗り換えだけ。デパートの上で夕食を食べ、当時の事とてまだアレだったお冷やの味に驚いた以外の印象がない。試合は負けた。テレビでも現地でも母校の負け試合しか見たことがない。
2回目は若かりし頃に行った親との京都旅行の宿が訳あって大阪だったというだけで、これもただ寝に戻った以外の何ものでもなかった。車だったので尚更。
3回目にしてようやく目的地としての大阪に来た。3年前、ジンベエザメを見に日帰りで来て、ついでに大阪城と天王寺を見物し、日本橋を歩き、かすうどんのことが好きになった私は、りくろーおじさんと551を提げて帰った。りくろーおじさんは薪パイがとても美味しい。
そして4回目、この春。Blueskyのゆるゆる部活動であるところの胡乱映画部のオフ会が大阪であった。前回遠くから眺めただけの通天閣に登ったり、昼から酒を飲んだり、忍者屋敷でメイドさんが拵えたたこ焼きやバケツプリンを食べたり、知育菓子に感心したり、配信にはあまり来ない映画を観たりして大層楽しい時間を過ごした後、帰り間際に行ったカラオケ、様々な胡乱ソングが披露される中で、その歌を聞いた。
「喜志駅周辺なんもない」
うちの辺りも実家の辺りも、まあまあ喜志駅だと思った。というか都市圏の郊外にある駅は割と喜志駅じゃないかと思った。その中でわざわざ歌われていることが面白いと思った。
調べた所、喜志駅は歌に出てくる天王寺まで30分位らしかった。天王寺駅も一度降りたくらいでよくは分からないが、古刹と動物園があり、交通の便が良さそうな駅だということは知っている。つまり上野かもしれない。上野にあべのハルカスはないが、スカイツリーはまあまあ近い。
山手線の繁華街まで電車30分くらいで、特筆すべきところは然程ないが家賃が安くも無い感じだとすると、めっちゃわかる。電車代はうちの実家のほうがちょっと安いかもしれない。芸大では無いが特化型の大学はある。バスの乗車マナーが悪いので地元民の評判は良くない。ある意味DQNかもしれない。
気にはなるが大阪まで行って、何もないと言われている、実家の辺りを彷彿とさせる駅に行くのは流石に酔狂が過ぎる気がしたので、一旦好奇心を横に置いた。
しかしGW過ぎ、Blueskyのフォロワさんが喜志駅に行ったという記事を読み、隣駅富田林の瓦が埋め込まれた道の写真に一目惚れをした。行ったことのない瀬戸の窯垣が大好きな私にクリーンヒットしてしまった。
と言う訳で、そこから1ヶ月半経った今、20日前の休日出勤の振替休日、双子台風が大雨を降らせている中で5回目の来阪をした私は、喜志駅に降り立ったのだ。
富田林河内長野間は運休になっているようだが、今は小降り。喜志駅に寄る必要もなければ、何なら先に瀬戸に窯垣を見に行くべきだったのではと言う脳内の声が聞こえる。ついでだから、と日帰りの癖にどう考えても富田林方面と別段相性が良くない寄り道の予定をいくつかつけたから、喜志駅を堪能する時間のご用意もしていない。
来ると決めたのは5日前だし、引っ越し諸々でGWに何もしなかったから、兎角何かできればそれでも良かったという所はある。それにしても、寄り道するならせめて大仙古墳とかにすればまだ方面的に相性も良かったし、時間の余裕もあったよね。
まあそれでも、名古屋で降りて大和八木までひのとりに乗ろうという更にアレな計画は避けた。どうせ乗るなら完乗したほうが良い。
ふらっと降りただけで何もないと言うほど失礼にもなれないが、確かにまあまあ何もない駅で、今の住処や実家よりは、実家から15km、うちからは5km離れた今は亡き母方の祖父母宅のあたりに似ていた。天王寺から思ったより感覚的には近いが、490円かかるのは確かに痛い。
この駅が歌に歌われている。殊更に何もない駅として歌われているのは何だかとても趣深かった。
本降りと土砂降り、小止みを繰り返す中を富田林まで3キロ歩いて、生憎の悪天候が逆に風情を添えている瓦の埋まった小道を見、真横で車同士が軽く衝突するというジャンプスケアに遭遇し、歌にも出てきたあべのハルカスの近くでちょっとした推し活をし、庭園で父から譲り受けたカメラを試し、藤田美術館で曜変天目を見ての帰り道、台風から逃げるように走る新幹線でこれを書いている。
本当はあと3時間、1寄り道するつもりだったのだけれど、万が一を考えて繰り上げた。家で猫氏が待っているので。
しかし肉まんと肉団子、薪パイが荷物に入っており、今回買うつもりがなかったチーズケーキも入っているので十分じゃないかなと思う。チーズケーキはちょっと潰れているし、予定は減らしたし、行程は無駄だらけだったけれど楽しかった。無駄は楽しい。
こうして私は喜志駅に行ったことがある人になったが、申し訳ないことに、未だにヤバイTシャツ屋さんは聞いていない。