2022年の夏に、初めてつくった恋愛ゲーム『さくらいろプリズム』をリリースした。元々は友人と二人で思い出づくり程度に始めたものが、だんだんと気合が入ってしまい、最終的にはプロの声優さんに声をお願いすることにした。スコープが膨らまないよう、声優は起用しないと最初に決めていたにもかかわらず、である。柏木葵役に吉岡茉祐さん、明石澪役に桜咲千依さん、須磨初音役に山岡ゆりさんにご出演いただいた。当時は会社に勤めていて、ちょうどボーナスが入ったのと、コロナの関係で多少の補助金が入ったことが、財布の紐を緩めた。
その後、2024年に続編となる『さくらいろテトラプリズム』、そして新シリーズの1作目『C.V. 私と私の中の人 The Fourth Insider』をリリースした。1作目の御三方に加え、テトラでは新規に和久井優さん、長谷川玲奈さん、山田麻莉奈さん、川口莉奈さん、石谷春貴さん、七原帝子さん、そしてC.V.では宮白桃子さんにご出演いただいた。
正直、やりすぎた感は否めない。そもそも、こうしたインディゲームで、最初から声優を起用する例は少ない。ある程度売れて、パブリッシャー経由でSwitchやPS5などのコンソールに移植する際にボイスがつく、といったケースが一般的らしい。私はそれを、売れる前に自腹でやってしまった。やはり無理があったし、多方面にご迷惑をおかけした。キャパを超えてしまったのだ。
それでも、思い切って声優さんにお願いして、本当に良かったと思っている。もしも、1作目で声優さんにお願いしていなかったら、今頃ゲームはおろか、創作を辞めていたと思う。続ける理由がないからだ。ゲームをつくりたいという気持ちは最初からなかった。とりあえずつくり始めて、気がつけばこうなっていた。辞めようと思えばいつでも辞めることができた。誰にお願いされたわけでもない。完成を待っている人もほとんどいない。続ける理由を探すほうが難しかった。
でも、辞めたくはなかった。ほとんど意地みたいなものである。ゲームをつくり始めるまで、私は映画の道を志していた。短編映画やミュージックビデオを撮って、チャンスをつかもうと足掻いていた。でも、だめだった。理由は簡単だ。途中で辞めたからだ。
今の時代、創作の成果が簡単に認められることはまずない。うまくいっている人は、よほどの強運の持ち主か、天才かのいずれかである。そのどちらでもない人は、とにかく地道に続ける以外に道を切り拓く方法はない。ということを、映画をやっていた頃の私は知らなかった。
声優という職業は、その意味では、最も残酷な競争に晒されている職業といえるかもしれない。声優志望者はものすごく多く、用意される椅子はあまりにも少ない。そのような記事が、探せばいくらでも出てくる。よほどの売れっ子でない限り、声優が一人辞めたところで、ほとんど誰にも迷惑はかからない。
それでも、声優を続けている人がたしかにいる。少なくとも、私の作品に出演してくださった方々は全員、今でも声優を続けている。すごい、という言葉では明らかに足りない。本当に、頭が下がる思いである。そういうことを、1作目の収録の時点で、私はなんとなく感じていたのだと思う。どんな理由があろうとも、途中で辞めるわけにはいかない。声だけではない。創作に向き合う覚悟を、少しだけ、お裾分けしてもらったのだ。
私が創作を辞めたところで、悲しむ人はいないだろう。これを読んでいるあなたなら、あるいは、少しは悲しんでくれるかもしれないけれど、でも、私のことなどすぐに忘れてしまうと思う。それでも、私は創作を辞めない。つくり続けると決めたから。それ以外に理由はいらない。今年は新作を2本リリースする予定だ。いずれも、声優さんにご出演いただきたいと思っている。予算の目処も立っている。本当はもっと予算も規模も本数も増やしたいところではあるけれど、まあ、気長に行こうと思う。辞めなければ、夢は叶う。辞めないことが、いちばん難しい。