好き好んでパワハラをする人はいない(と思う)。それでも、パワハラはあらゆるところで起こりうる。立場の非対称性ゆえに、ほとんど必然的に起きてしまうともいえる。だから、パワハラをしないために、ある程度は自覚的に気を付けたほうが良い。私も、一応、パワハラをしかねない立場にあるわけで、注意するに越したことはないと思ってこれを書いている。
まず、透明性はきわめて重要だろう。立場の非対称性は、情報の非対称性といっても良い。つまり、一方だけが秘密を握っていて、それを使って相手を脅迫するような状況が考えられる。脅迫、というと大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、職場などでも簡単に起こりうる。上司は部下に関する情報を(一方的に)知っている。部下のパフォーマンス改善のためにその情報を使うくらいなら問題ないが、エスカレートすると部下にはプレッシャーになる。このあたりの線引きは難しいだろう。だから、できるだけオープンにすることが大切だ。上司は部下についてどのような情報を持っているのか、それに基づいてどのように評価するのか、といった具体に。
個人情報や内部情報など機密性の高いデータを除けば、基本的にはどんどんオープンにすべきだと思う。パワハラを防ぐ、つまり立場の弱い者を守るだけでなく、立場の強い者の手間を減らすメリットもある。情報をクローズドにしていると、必要があったときに都度説明しなければならない。面倒であるし、相手によって説明が変わってしまったら、それが意図的でなかったとしても、パワハラや不公平に繋がりかねない。最初からオープンにしておくことで、ハラスメントのリスクも、手間も減らすことができる。
私の場合、日々こうして書いているエッセィは、情報公開の一環である。私という人間についてあらかじめ知ってもらうことで、コミュニケーションにおけるリスクを減らしたいのだ。もちろん、プライベートについては書けないこともあるし、作品についてもネタバレを防ぐためにあまり書かない。だから完璧ではない。けれど、ざっくりでいいから、どんな人間なのかを知ってもらうことには、双方にメリットがあると感じている。エッセィを毎日書くようになって半年が経つが、それなりに宣伝効果(?)はあるようだ。具体的なメリットが現れるのは、もう少し先だろう。信頼は、一朝一夕に築けるものではない。
私の書いた文章を読んで、「なんか苦手だなあ……」と思った人は、無理に近づく必要はない。誰とでもうまくやれるタイプではない(そんな人がいるとも思えないのだけれど)。最初からオープンにしておけば、絶望的なミスマッチのほとんどは予防することができる。それでも、不幸の確率をゼロにすることはできない。嫌なことがあったとき、嫌だと言うのは簡単じゃない。だから、先回りして、少し過剰すぎるくらいに、こちらから本音をぶちまけておく。腹を割って話そう、と詰め寄る時点でパワハラなのだ。パワハラをしないためにも、まずはこちらから腹を割って見せることが重要である。