恋愛体質ではないと思う

池田大輝
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公開:2025/8/23

最近、結婚についてのエッセィを書くことが多い。それに、一応、恋愛ゲームクリエイターである。だから、読者の中には、私が大変な恋愛体質であって、恋に愛に飢えているように見えている方がいらっしゃるかもしれない。そうではない、という話。

そもそも、そんなに恋愛体質ではないと思う。恋人が欲しいと思ったことは今までの人生でほとんどない。もちろん、恋人ができたらうれしいとは思うし、うきうきした気分になるけれど、それを強く望むかどうかは別問題である。

結婚したいというのも、別にイチャイチャしたいわけではない。もっと、人生をともに歩むパートナーみたいな、そういうニュアンスである。というか、結婚を望む人は大体そうなのではないか。遊びたくて結婚する人はいないだろう。

なんというか、もう、次にお付き合いする人と結婚すればいいと思っている。逆に言えば、結婚するつもりがない人とお付き合いすることは(仮に望んだとしても)できないと思う。当然、そうしたいとも思わない。遊びたい気持ちは皆無。今までも遊びで恋愛したいと思ったことはない。ぜんぶ、真剣なお付き合いだった。

遊ぶって、どんな感じなのだろうか? 相手も遊びを承知しているのか? 既婚者と交際する人は、ドラマなんかを見る限り、相手が既婚者であることを知っていることが多い。そんな人となぜ付き合えるのか? スリルがあるから? 優越感があるから? 全く理解できないけれど、そういう人はきっと少なくないのだろう。想像もつかない世界である。

仮に私がゲームの中で、ひどくモラルに欠ける恋愛を描いたとしても、それは私の欲望とは一切関係がない。現実で叶えられない欲望を作品に昇華する、ということでもない。そういう気持ちでものづくりをしていない。作品は作品であり、作者は作者である。

まあ、とはいえ、あえて誤解やミスリードを誘うことをしていないとも言い切れない。このエッセィももしかしたらミスリードかもしれない。本当は恐ろしく恋愛体質な人間であって、今頃、恋人を横に座らせながらこれを書いているかもしれない。「ねえ、なに書いてんの。うける」などと言われているかもしれない。肩にかかるくらいの彼女の髪が、ふわりと石鹸の香りを漂わせながら、艶やかに光っているかもしれない。冷凍庫から取り出したスイカバーを彼女は手に持って、私の口に近づけているかもしれない。夏の終わりを感じさせるスイカバーの味に、少しほろ苦い気分になっているかもしれない。「ねえ、メロンバーとスイカバーどっちが好き? あたしはメロンバー」と彼女は言っているかもしれない。「スイカバー」と私は答えているかもしれない。「じゃあ、混ざったらどうなるのかな」と彼女は言っているかもしれない。そして、そのまま、キスしているかもしれない。このエッセィの投稿時間がいつもより10分くらい遅れたのは、ここに書いたことが本当にそうだったからかもしれない。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink