手の届かない場所にいてほしい

池田大輝
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公開:2026/1/22

いろんなものが簡単に手に入ってしまう時代である。テレビの向こう側でしか会えなかった芸能人はSNSをやっている。二度と手に入らないと思っていたレトロゲームもメルカリで買える。欲しいものは手に入り、会いたい人には会えてしまう。

と、錯覚してしまうのは、近くにあるものばかりが視界に入り、その遥か向こう側にある存在が、霞んで見えなくなっているからだと思う。SNSでメッセージを送ったからといって、距離が縮まったわけではない。ラジオで手紙を読まれたからといって、友達になったわけではないのと同じ。距離感を誤解させるという意味において、インターネットほど厄介なものはない。これは、自戒も込めている。

手の届かない存在は、手の届かない場所にいてほしい。エベレストに簡単に登れるようになっても、全然うれしくない。エベレストは、エベレストだからこそ、いつか登ってみたいと思う。月は、そこにあるからこそ、いつか行ってみたいと思う。あなたは、簡単には会えないからこそ、いつかちゃんと会いたいと思う。簡単に手に入るものには興味がない。誰もが持っているものにも興味はない。誰も足を踏み入れたことのない世界の果てで、私はあなたを見つけたいのだ。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink