私は5人きょうだいの一番上であり、五等分の花嫁で言えば、一花ちゃんポジションにあたる。さすがに五つ子ではないけれど。
五等分の花嫁は、五つ子姉妹がヒロインのラブコメである。上から順に中野一花、中野二乃、中野三玖、中野四葉、中野五月。主人公の上杉風太郎は、同い年ながら家庭教師として、彼女たちに勉強を教えることになる。
長女である一花ちゃんは、高校生でありながら、女優の仕事をしている。ネタバレになるので詳細は省くが、一花ちゃんは、いわゆる負けヒロインのような哀愁を序盤から漂わせている。長女ということもあって、どこか達観したような、俯瞰したような、ミステリアスなお姉さんキャラで風太郎に接する。が、それは、不器用さや傷つきたくない気持ちの裏返しでもあって、そうしためんどくささが、風太郎をたびたび苛立たせていたように記憶している。
きょうだいの一番上として、一花ちゃんには共感するところが多い。一番上は、どうしたって幸せにはなれない。下のきょうだいが生まれたときから、それをなんとなく察している。下のきょうだいのために、いろんなものを我慢しなければならない。我慢することが大事だと思い込んでしまう。自分さえ我慢すれば、全員、幸せになると知っているからだ。
幸せになる、ということを知らないまま生きてきた人は少なくないだろう。もちろん、一番上に限らず、二乃にも三玖にも四葉にも五月にも、それぞれの喜びがあり、それぞれの苦悩がある。けれど、一花ちゃんのそれは、やはり、どこか、少し違う。きっと、何度人生をやり直したとしても、どんなに優しい風太郎に出会ったとしても、彼女は幸せにはなれない。一番上として生まれた時点で、普通の意味での幸せを手に入れることは絶対にできない。極端に聞こえるかもしれないけれど、一番上ならわかってくれると思う。だから、普通じゃない意味での幸せを、自分で見つけなければならない。一花ちゃんが女優を目指すのも、私が恋愛ゲームをつくるのも、幸せになるための唯一の選択肢なのかもしれない。