夢は、カーチェイスを撮ることです。

池田大輝
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公開:2025/4/22

私は現在、恋愛ゲームをつくっている。と、いろんな場面で自己紹介しているから、私のことを「恋愛ゲームをつくる人」と認識している人は少なくないと思う。間違ってはいないけれど、夢は、恋愛ゲームをつくることではなく、カーチェイスを撮ることである。

私の原体験は『ターミネーター2』だ。小さい頃からよくテレビでやっていて、何度も何度も観た。特にT-1000が好き。液体金属のターミネーターである。独特の走り方で覚えている人も多いと思う。

T-1000が追いかけるのは、主人公・ジョンコナーだ。将来、機械軍の脅威となるジョンを子供のうちに殺すのがT-1000のミッションである。だから、バイクで逃げるジョンを走って追いかける。追いつけなくなると、トラックを強奪してさらに追いかける。ジョンを殺すためだけに乱暴に運転されるトラックに、私は心惹かれていた。

ちなみに、駄作と評されることの多い『ターミネーター3』だけれど、少なくともカーチェイスについては前作に劣らない迫力である。とにかく、運転が乱暴なのだ。クレーン車のクレーンを横に突き出したまま街中を爆走し、建物を破壊しながらジョンを追いかける。あまりに最高である。4以降はよくわからない。一応全部観たはずだけれど、あまり記憶にない。

そんなわけで、ずっとカーチェイスを撮りたいと思っていた。高校生の頃は、車の代わりに自転車でカーチェイスならぬバイシクルチェイスを撮った。カメラマンである私が自転車に乗りながら片手でカメラを持ち、自転車で爆走する友人を撮影するのだ。自転車でも結構迫力のある映像が撮れた。危ないので良い子は真似しないように。

大人になると、そういうこともできなくなってきた。最近は恋愛ゲームをメインにつくっているから、カーチェイスを撮る機会はまずない。撮ろうと思わなければ絶対に撮れない。だから夢なのだ。お金を稼いで、広大な土地を借りてカーチェイスを撮りたい。『マトリックス・リローデッド』みたいに、わざわざ仮の高速道路を建設して、大量の車を走らせて、大量の車を破壊したい。最近では、クリストファー・ノーラン監督の『テネット』のカーチェイスはよかった。あれは実在の高速道路を封鎖して撮影したらしい。さらに、監督自らポケットマネーで飛行機を買って(?)、飛行機が空港施設に突っ込むシーンまで撮影したという。いいなあ。楽しそうだなあ。

カーチェイスを撮りたい。それも、できれば、派手なやつを。簡単には撮れないだろう。日本で撮れる場所はあるのだろうか。たぶん、ないと思う。ならば海外で撮るしかない。じゃあ英語を話せるようにならないと。というか、その前にまずはお金だ。莫大なお金がかかる。つまり、時間がかかる。10年では無理だろう。20年後に撮れたらラッキーくらいの気持ちだ。

簡単には叶わない。だから夢なのだ。派手にいこう。夢も、恋も。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。エッセィを毎日更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink