秋の気配

池田大輝
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公開:2025/9/10

相変わらず暑い日々が続く。けれど、ここのところ少し、空気が秋めいてきている気がする。空気の湿度が下がり、風は穏やかに、陽は少し傾いて。日照時間は明らかに短くなった。18時にはもう真っ暗。クーラーをつけたまま寝ると、朝、少し寒い。

私は秋が好きだ。9月生まれだからというのもあるけれど、それ以上に、秋の死にゆく気配が好き。暑く、燃え盛るような夏。すべてがみずみずしく、生命力に満ち溢れている。秋は、それを奪い去ってしまう。からりと乾いた空気は、空虚な死を予感させる。植物は枯れ、雲は天へと近づく。

きっと、死ぬときも同じなのだろう。これが死の気配なんだ、と、死にながら知るのだと思う。そして、たぶん、それは悲しいことじゃない。秋が来ることは悲しくない。少し寂しくて、ノスタルジックな気分になるだけ。夏休みが終わらなければいいのにと、誰もが一度は望むけれど、でも、終わらない夏休みのほうが恐ろしいのではないか。夏休みが終わるべくして終わるように、秋が来るべくして来るように、人は死すべくして死ぬ。死とは、存外に穏やかなものなのだなと、秋は思わせてくれる。だから、秋が好きなのだ。

@radish2951
恋愛ゲーム作家。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink