結婚の話はもう飽きた

池田大輝
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公開:2026/5/9

ふだん創作に閉じこもっていると気づかないけれど、世間の人々は結婚の話が大好きなようである。30歳くらいになると、誰と会ってもそんな話になる。結婚しなきゃまずい、と本気で思っている人は想像以上に多いらしい。気持ちはわからなくもない。一人では生きていけないという不安はある。とはいえ、結婚は銀の弾丸ではない。結婚したらしたで大変なのはよくわかった。それに、私は天邪鬼な人間なので、みんなが結婚の話をしていると、別の話をしたくなる。

明日、美容院に行く。かれこれ5年以上は通っている、表参道の美容院である。いま、人生で最大級に髪を伸ばしている。長いほうが落ち着く。とはいえ、ちょっと鬱陶しくなってきたので、良い感じにしてもらう予定。

髪を伸ばし始めてから、人生が少しずつ楽しくなってきた。他人の目を気にしないようになった。他人の目なんて気にするだけ無駄だ。他人の数だけ他人の目があるわけで、そのような意見にいちいち反応しても意味がない。他人の人生を無視することは、自分の人生を生きる第一歩である。

とか言いながら、じゃあどんな髪型が似合うのかなんて、全然よくわからない。他人の目を無視すれば、直ちに自分の人生を生きられるようになるわけではない。

髪を伸ばしてみることは、自由に生きるための予行練習みたいなものだ。長すぎたら切れば良い。切りすぎたらまた伸ばせば良い。何度だってやり直せるのが髪の良いところ。人生も本当はそれくらい自由なはずなのに、髪型を都度考えるのが面倒なように、自由に生きるのもまた面倒だから、多くの人は自由と引き換えに楽であることを選ぶ。みんなと同じ髪型にするほうが楽。用意された型に従うほうが楽。誰かに決めてもらうほうが楽。自由に生きることは楽ではない。

いま、ものすごい頭痛に襲われながらこのエッセィを書いている。なかなか着地しないから、文字通り頭を抱えている。自由とは、こんな感じなのだろう。暗闇の中を不安なまま歩いていく。好きな人が長髪が嫌いだったらどうしよう、と気を病みながら髪を伸ばす。まあ、仮にそうだったとしても、短くすることはないだろう。誰かを愛することと自由に生きることは両立する、と信じている。

@radish2951
恋愛ゲームをつくっています。毎日21時頃にエッセィを更新しています。恋愛ゲーム『さくらいろテトラプリズム』をよろしくお願いします。 daiki.pink