明日、生まれて初めて海外に行く。今から不安でしょうがない。行き先は前に書いたっけ? アメリカである。はあ。生きて帰って来れるだろうか。なんだかものすごく嫌な予感がする。というか、厳密には旅行ではない。出張、つまり仕事である。とある学会に参加する。そちらも輪をかけて不安である。
海外に行ったことがない、と言って、ひどく驚かれたことが一度だけある。彼女は大学の写真部に他大学から来ていた女の子だった。なんとなく、お嬢様っぽい人だった。関東圏に住んでいる人は、海外旅行に行ったことのある割合が高いと聞いたことがある。私は秋田の出身で、少なくとも高校時代までは、海外経験のある人なんてまわりにほとんどいなかった。そのような文化が秋田にはなかった。東京に来て、カルチャーショックを受けた。正確には、それをカルチャーショックだと認識できるようになったのはつい最近のことである。あまりにも常識が違った。小学生が塾に通い、中学受験の勉強をする。高校はみんな名門校で、大学に入った時点でヒエラルキーが決まる。私がいた大学は、そういう場所だった。
そういう世界に馴染めないまま、すっかり大人になってしまった。息苦しい世界の片隅で、こうしてしずかに生きている。アメリカも、なんとなく息苦しい場所のように見える。強くなければ、生きていくことは難しいのだろう。
もしも生きて帰って来れなかったら、いまつくっているゲームを誰かに引き継いでもらいたい。世に出ていない作品がたくさんある。死ぬのは怖くないけれど、せっかくの作品を完成させられないのは悔しい。そう思うと、のんびりしている暇はない。一刻も早く新作を完成させて、次をつくらなければならない。そうやって、生きていくしかないのだ。つくづく人生とは、ゆるやかに死に向かう下り階段のようである。初めての海外がこんなにも不安なのは、その歩幅が日本とは少し違うからだと思っておくことにしよう。